Information
ブログ

ブログ

訪日旅行者の情報収集についての分析 ~タビマエ・タビナカでの違い~

ブログ EXPORT JAPAN

japan-guide.com(以下、ジャパンガイド)ではコロナ禍以降も毎月150万~200万人ほどのユーザーが訪れて情報収集を行っていますが、今回はユーザーがどんなタイミングでどんな情報を見ているのかをデータから深堀りしていきます。

タビマエ:タビナカの外国人利用比率はおおよそ3:1

GA4(Google Analytics 4)ではユーザー端末の言語設定でフィルタリングすることが可能です。今回は外国人ユーザー利用のみを調べたかったため、「日本語端末を使用していないユーザー」=「外国人ユーザー」と想定し、日本語端末以外からのアクセスを対象として集計を行いました。集計期間は2023年3月12日~6月11日の3か月間です。

全外国人ユーザーの利用のうち、日本国外からのアクセスを「タビマエ利用」、日本国内からのアクセスを「タビナカ利用」と定義して区別したところ、以下の図表1の通りとなりました(厳密には、後者には在日外国人の利用も含まれます)。

図表1:ジャパンガイドの日本人/外国人ユーザー比率
※Google Analyticsデータ参照:2023/3/12~2023/6/11

集計期間における外国人ユーザー総数は5,524,848名で、そのうち76.6%がタビマエ利用、23.4%がタビナカ利用という結果です。ジャパンガイドのサイト上における外国人ユーザーのタビマエ:タビナカ利用比率はほぼ3:1の比率と考えてよいでしょう。

地域の観光情報は、タビナカでアクセスが30%近く伸びる傾向

ここからは、ページごとのPV比率を見て行きます。以下図表2は、集計期間で外国人ユーザーによく見られた記事のトップ15です。
まず2行目に記載したサイト全体のPV数をご確認ください。サイト全体でのPV数も、ユーザー数同様にタビマエ3:タビナカ1の比率になっていることが確認できます。

図表2:ジャパンガイドのよく見られているページトップ15のユーザー比率
※Google Analyticsデータ参照:2023/3/12~2023/6/11

3列目はページ毎の全PV数に占めるタビマエ利用者の比率で、5列目はタビナカ利用者の比率です。
サイト全体の比率(タビマエは74.29%、タビナカは25.71%)を基準と考えて、より比率が大きい項目を背景色青、小さい項目を背景色黄にしています。なかでも特にギャップが大きい項目(5%以上の差異)は背景色濃度を高めにし、太字にしています。

上記図表2より、「東京」以外のエリアの観光情報ページはタビナカ閲覧比率が高めになりやすいことが確認できます。
これは、旅行者の多くが羽田や成田から日本入りし、東京から観光を始めることと関連していると考えられそうです。旅行中のプランについてあまり細かく決め過ぎない旅行スタイルの場合、最初の滞在先や絶対に行きたい目的地についてだけ事前に下調べし、以降の目的地については入国後に調べている人が多いことが予想されます。

これらについては興味深い現象ですので、以下、タビマエでの外国人ユーザーの情報収集について、さらに掘り下げてみてみたいと思います。

旅行計画段階でのディスティネーションとしての富士山の存在感

以下図表3は、タビマエ外国人ユーザーからよく見られているページトップ40です。
先程と同様に、サイト全体比率74.29%より高い項目の背景色を青に、低い項目の背景色を黄色にし、5%以上のギャップがあった箇所は背景色濃度を上げつつ太字にしています。

図表3:ジャパンガイド、タビマエ外国人ユーザーによく見られているページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2023/3/12~2023/6/11

背景が青で太字になった項目をまとめると次のようになります。
①サイトリピーターがよく訪れるページ(トップページ、サイト内検索、フォーラム)
②JRパス関連コンテンツ
③訪日旅行計画作成のためのページ(目的地、訪日旅行の時季、トラベルアラート、成田空港)
④一部のエリアの観光案内(富士山、北海道)
⑤日本についての知識(「日本の歴史」)

③について補足します。ジャパンガイドでは、訪日旅行予定者が訪日旅行の計画を建てやすいように様々な特集ページを用意しています。例えば「目的地」のページは訪日外国人が興味関心を持ちやすい日本の主要な観光エリアを関東、関西などの地方毎で一覧にしたコンテンツで、「訪日旅行の時季」のページは旅行の時季を決めるために月毎の気候等の情報をまとめたものです。入国時の玄関口になることの多い成田空港のページもここに含めて良いコンテンツと言えるでしょう。

左:「Destination」ページ、右:「When to travel」ページ

これら旅行計画作成用のコンテンツがタビマエでよく閲覧されているのはコンセプト通りの結果と言えます。入国前の取得が推奨されるJRパス関連の②も同様にタビマエこそ頻繁にアクセスされるのが納得のコンテンツです。座学的な知識コンテンツである⑤も、タビナカでの閲覧はイメージしにくいページです。
①はブックマークにジャパンガイドを登録してよく閲覧しているリピーターほど訪問・利用頻度の高いもので、これらも旅行中より自宅PCでの情報収集向きです。

ここで注目は④です。先程、東京以外のエリアガイドはタビナカでよりアクセスが高まると仮説を立てましたが、より範囲を広げてみることで例外の存在が確認できました。「富士山」と「北海道」です。
「富士山」のページに関しては19位とサイト全体で見てもアクセス数が多く、また「富士山登山」のページも35位に入っていることから、富士山は旅行の主要な目的地としてタビマエから熱心に情報収集されている強力なコンテンツであることが予想されます。

日帰り型観光か滞在型観光かで分かれるタビナカアクセスの伸び

続いて、タビナカで外国人ユーザーからよく見られているページトップ40を表示します。ほとんどがエリアやスポットの観光案内のページです。

図表4:ジャパンガイド、タビマエ外国人ユーザーによく見られているページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2023/3/12~2023/6/11

タビナカはタビマエ以上にその傾向が表れやすいようで、トップ40のページのほとんどが背景色青のサイト全体の25.71%よりもタビナカアクセス比率の高い項目となっています。その中でも特にギャップの大きい項目を太字にしていますが、ここでタビナカでの伸び率の違いについて考えてみましょう。
太字の背景色青にした項目は、トップ40のうち全21項目ありました。うち関西圏のエリア・スポットに関するものが10項目、関東が8項目です。つまり東京・京都・大阪という訪日旅行滞在先トップ3からの行動圏がほとんどです。
このことから、タビナカでのアクセスが特に伸びやすいのは、滞在した場所から日帰りで訪れることが出来て、訪日旅行中に行先として興味・関心を抱いた場所のページが当てはまると考えられます。
“日帰りでの観光が多く、滞在は少なめ”と言われる「奈良」「鎌倉」のページは、特にタビナカでのアクセスが増加している地域のページです。”東京(または京都・大阪)から遊びに行ける場所”として有力な選択肢になっているものと思われます。

上記に対して、「京都」・「大阪」・「箱根」・「金沢」・「高山」など”滞在先になりやすい地域”のページのタビナカアクセス比率は25%~28%の間に留まっており、日帰り旅行が中心の奈良や鎌倉・神戸などとは異なる動きをしているのが確認できます。

滞在観光が多い地域でも、広島のアクセスは例外的な動きをしています。
「広島」のページへのアクセスは、約40%近くがタビナカ利用です。また、「宮島」のページのタビナカアクセスもほぼ同数に近く、及び「広島ー宮島のアクセス」のページのタビナカの伸びは50%超となっています。
上記の宮島関連ページへのタビナカアクセスのことも踏まえて考えると、(滞在者であれ日帰り訪問者であれ)広島から宮島への日帰り旅行を検討する目的でこれらのページにアクセスされているのではと考えられます。

また、タビマエでも触れた富士山に関連するコンテンツとして、タビナカでは「富士ビュースポット」の記事が4割近いタビナカユーザーを獲得している点も注目です。

まとめ

ここまで、タビマエ/タビナカでのユーザーの情報収集に関して、どちらのタイミングでどんなページが見られているのかという観点からの分析をしてみました。
以下簡単なまとめです。

・ジャパンガイドにおけるタビマエ:タビナカ利用の比率はほぼ3:1
・東京以外の地域の観光案内ページはタビナカでアクセスが伸びやすい傾向にあるが、富士山や北海道などの例外もある。
・日帰り観光が主となる地域のタビナカアクセスは、滞在型観光が主となる地域よりも伸びやすい(後者のほうがタビマエアクセスの比率が高いとも言えます)

以上はあくまでジャパンガイドのサイト上における特徴ですが、インバウンドに取り組まれる地域やDMO、事業者の皆様のサイト設計において少しでも参考になれれば幸いです。

関連記事