ジャパンガイド 2023年の訪日観光地ランキングベスト20
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2024年も早くも1/6を消化しようとしています。
これから来る桜のシーズンに向けた準備を進めているインバウンド事業者の方も多いのではないでしょうか。
インバウンドが回復途上だった昨年同時期と比較して、今年は非常に多くの訪日外国人旅行者が桜の時期の日本を訪れることが予想されています。
訪日旅行者の数が増えること自体は喜ばしいことですが、旅行者のいる場所が集中しすぎてしまうとオーバーツーリズムの問題が生じてしまいます。
そのような観点からも、地方誘客の促進はインバウンドにおける当面の大きな方向性であり続けることでしょう。
上記した課題感も踏まえつつ、本稿ではjapan-guide.com(以下ジャパンガイド)にて2023年にアクセスの多かった地域のベスト20を発表させていただきます。
誘客に成功している地域は、何がフックとなって旅行者を集めるようになっているのか。そんなところを知るヒントとしていただければ幸いです。
全221観光地域のインバウンド人気ランキング
ジャパンガイドでは、発信内容に応じてページを分けており、それらを大別すると「Destination」「Planning」「Interest」「News」「その他」という5カテゴリーで構成されています。その構造を可視化すると上記イメージ①のようになります。
最もよく見られているのが観光地域情報である「Destination」ですが、その中には2024年2月現在、全部で221地域になる観光地セクションが登録されています。
各セクションの中には、その地域の観光スポットやタウンのページが掲載されています。例えば「木曽谷」セクションの中には「妻籠」や「馬籠」のページがあります。
具体的なスポット/タウン以外にも、例えばアクセス情報や観光プラン案内、フードやアクティビティなどといったその地域を楽しむための情報もページ化され、各地域セクションの中に含まれています。
実際のページの表示では次のようになります。
下記イメージ②③は、「木曽谷」セクションの中でのトップページにあたる「木曽谷」エリア情報ページです。
この中にイメージ③のように「馬籠」「妻籠」などのより具体的なタウン/スポットのページや、木曽谷への「アクセス情報」「バス時刻表」などの情報ページが格納されています。
今回は、個別のページの比較ではなく、より広範にエリア単位での傾向を見ていくことを目的として観光地域セクション毎でのアクセスを見ていきます。
まずはざっくりと、全221観光地域の2023年のアクセスランキングを見てみましょう。
主要地域へのアクセスは軒並みコロナ前より上昇
ジャパンガイド各地域セクションの2023年トップ20は、図表④の順番となりました。
1位~7位までが所謂ゴールデンルート(東京~富士箱根~京都大阪奈良)に該当する地域で占められており、ゴールデンルートを巡る観光スタイルが依然として定着していることを感じさせられます。8位の日光や10位の鎌倉も、東京から日帰りで訪れる旅行者が多いため、ここに含めることができるでしょう。
2023年の情報に加えて、表には2019年のPV数も表示しています。上記20地域はいずれも2019年比でアクセス数が伸びており、そのことは右側のグラフでも確認できます。
そのうち2019年比で倍以上にアクセスを伸ばしている地域セクションは太字にしています。該当するのは奈良、日光、金沢、高山、宮島、広島、高野山です。
なかでも大きな伸びを記録しているのが宮島セクションで、2019年比で3倍もの数値を記録しています。広島セクションの伸びと合わせて、5月のサミットの影響が大きかったものと思われます。
フリーパスの存在感が大きな日光と箱根の旅行
では、これらの地域セクションのうち、実際によく見られているページは何になるのでしょうか? 次にそれを見ていきます。
上記図表⑤では、先述の図表④でトップ10に入った地域セクションそれぞれの中で、アクセス数の多かったページを上から5つ表示しています。
各ページ名の右側に記載している%は、地域セクション内でそのページが占めるアクセスの比率です。例えば「秋葉原」のページは東京セクション全体の4.92%となります。
青字にしたのは地域セクション内比率10%以上を占めるページです。図表を見ていただければわかるように、比率10%を越えるページは基本的にそのセクション内で最上位のほうに位置しています。
各地域セクションのベスト5には、その地域におけるインバウンドの特色がよく現れています。
例えば、富士五湖エリアを除くどの地域セクションも、トップページにあたるエリア情報ページが最もよく見られていますが、その数値にはバラつきがあります。
エリアページにセクション全体での30~40%ほどの数値が集まっている地域が多いのに対し、東京や京都などのエリアページは控えめなシェアとなっています。
東京や京都では各観光スポット等のページのシェアも5%未満がほとんどで、10%超の京都の伏見稲荷が例外的な存在です。
さらに、表の一番右に記載した「その他のページの比率」を見てみると、東京は70%以上、京都が60%以上となっています。このことは、東京・京都においてはトップ5以外のページもよく見られていて、アクセスが分散していることを示しています。
東京・京都の2地域については、満遍なく様々な観光情報が見られていると考えることができます。
これに対して、例えば「奈良」のページはトップページや「奈良公園」「東大寺」「アクセス情報」だけでセクション全体の70%近い割合となっています。奈良に関心を持つユーザーのうち多くが”奈良公園の鹿や東大寺の大仏がお目当て”であることが推測される結果と言えるでしょう。
都市圏で言えば興味深いのが名古屋のセクションで、上位に入っているジブリパーク、ナガシマリゾート、トヨタ関連施設などはいずれも名古屋市外に拠点を有するスポットです(トヨタ施設のみ名古屋市内外の両方に拠点あり)。
名古屋に滞在している旅行者の主なアクティビティは市外へのデイトリップであることを思わされます。
アクセス情報のページが上位にランクインしている地域セクションも多くありますが、こうした交通関連情報の需要具合にも地域ごとの特性が現れています。
例えば箱根では「箱根フリーパス」の情報がエリアページの次によく見られており、その次に1%の差で「アクセス情報」が来ています。同様の現象は日光でも起きており、「東武フリーパス」が3位につけ、その下にアクセス情報が来ています。
両地域におけるフリーパスチケットの影響力の大きさが現れた結果と言えるでしょう。
情報収集時点で宿泊が目的化している高野山
続いて、図表①で11位~20位だった地域セクションのアクセスランキングトップ5も見てみます。
いずれも1位はエリアページですが、それ以降は地域によって様々です。
金沢の「兼六園」や宮島の「厳島神社」、広島の「平和記念公園」などは他スポットの数値と比較しても突出して高く、それぞれの地域における兼六園・厳島神社・平和記念公園などの存在感の大きさを物語っています。
「アクセス情報」が上位に来ている地域も多いですが、その地域に行くことに熱心なユーザーが見ているという以外に、(外国人目線での)難易度もまた数値に反映されていると言えそうです。この比率が特に高めな10%を越えている地域は金沢、高山、宮島、高野山、白川郷など、いずれも外国人目線でアクセスに複雑さを感じるところという共通点があります。
なかでも高野山はアクセスの複雑さが有名ですが、その高野山で比率12.39%の「アクセス情報」ページよりも「宿坊」ページがよく見られているのは面白い現象です。
13.16%という「宿坊」ページの数字は、高野山情報をチェックしたうち7~8人に1人が「宿坊」ページをチェックしていることになり、相当に高い割合です。高野山での宿坊体験が特別なものとして認知されているエビデンスと考えられます。
高野山に比べると比率は少し低めになりますが、白川郷の「合掌造り集落での宿泊」のページにも同様のことがあてはまります。
日帰り誘客には成功したものの滞在型観光を促すことができていないという地域も少なくありませんが、そのような地域においては、高野山や白川郷のように特定のロケーションで宿泊する体験をブランドプロデュースすることが突破口となるかもしれません。
最後に
地方誘客の課題に対して、既存の人気観光地域の情報には様々なヒントが隠れています。今回ご紹介したようなデータに加えて、事業者サイドや地域サイドでの取り組みについても抑えることで、全国の他の地域でも応用できるノウハウを築いていけるのではないでしょうか。
例えば白川郷合掌づくり集落での滞在に興味を持つ訪日旅行者が多い点については、「合掌型集落に泊まることの何が特別なのか」という目線で考え、どのような見せ方や打ち出し方でそれを伝えてきたかを知ることが重要になるでしょう。
最後に紹介させていただきたいのは、今年に入ってジャパンガイドで公開した、岐阜県の恵那での滞在を特集した動画です。
ruralな魅力のあるoff-the-beatenなcountrysideとして恵那を紹介しており、都市の慌ただしさではなく、地方らしさを体感したい旅行者をターゲットとしています。
off-the-beatenという言葉は直訳すると「人里離れた~」というような意味合いで、落ち着いてゆっくりと楽しめる場所というような意味があります。コロナ禍以降、主にラグジュアリー層にとっては目的地を決める際の重要な要素となりつつあります。
誘客においてはわざわざ足を運びたくなる魅力を知ってもらうことが重要ですし、さらに滞在まで促す場合には、その地に泊まることの付加価値を知ってもらう必要があります。
ジャパンガイドではこのような誘客・滞在促進のご相談にもこれまで培ってきたノウハウを使って対応させていただきますので、ご興味があればぜひご相談ください。