鎌倉が急上昇 「桜」への外国人の関心の過去3年間の統計
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インバウンドが大きく盛り上がる桜の時期が近づいています。予報では、今週末頃には東京等では桜が開花すると言われています。
japan-guide.com(ジャパンガイド)にも桜のページは複数あり、桜についての概要や全国のスポットの紹介を行っています。
なかでも特に人気なコンテンツが桜の開花レポートです。
桜の開花時期にスタッフが各地へ取材に行き、その開花状況を報告するものです。
今年の桜開花予報ページは既に公開されています。随時更新されるので、気になる方は以下リンク先をブックマークください。
https://www.japan-guide.com/sakura/
本稿では、上記開花レポートも含めた桜関連コンテンツに対するユーザーのアクションを、過去3年間のデータを踏まえて分析していきます。
回復途上で数値が伸び悩んだ2023年桜シーズン
過去3年間といっても、2020年~2022年の桜シーズンは、入国規制があった時期です。
ジャパンガイドは基本的に訪日意欲のあるユーザーが訪れるサイトであるため、入国規制中は大きくアクセスを落としていました。
そのため、2023年の前のデータは2019年と2018年を使用します。
また、2023年の桜シーズンが、実際はどのような時期であったかについても抑えておきましょう。
久しぶりにインバウンドの話題が盛り上がった2023年の春でしたが、数値で見ると次のようになります。下記図表1をご確認ください。
こちらは観光庁発表の訪日来客数データをグラフにしたものです。
線グラフにしているのは2016年から入国規制年を除いた2023年までの推移です。横軸は1月~6月までの各月毎で区切っています。
こちらを見ていただければ、2023年の桜が花開く3~4月の時期の訪日来客数は2019年どころか2016年未満であったことがわかります。
過去記事でも紹介した通り、シンガポールなど、いくつかの国は比較的早い回復傾向を見せていましたが、大半の国は4月までの時点では伸び悩んだままでした。
こちらを見てみると、久しぶりのインバウンドで大いに盛り上がった2023年の春は、実はまだまだ伸び代を大きく残した状態であったことがわかります。
ジャパンガイドの桜関係のページへのアクセスは、その大部分が1月~4月半ばまでに為され、特に開花時期に入ってからは日本国内にいる訪日旅行者からのアクセスが集中するようになります。
そのため、上記の訪日状況の影響を大きく受けてしまいます。
以上を抑えた上で、まずは、桜についての概要を掲載しているページのアクセスから見ていきます。
ジャパンガイドでは桜の概要として次のページがあります。
・桜の開花時期……例年だと各地の桜がいつぐらいに開花するかの解説
・桜の品種……日本にある桜の品種についての解説
・桜の名所一覧……桜を楽しむのにオススメな場所の一覧
・花見の楽しみ方……日本固有の春の風物詩である花見についての解説
これらに加えて、「桜」というカテゴリーのトップページの合計5つのページについて、過去3年間のアクセスをまとめました。
過去3年間といっても、コロナ禍の2020年~2022年を除き、2023年・2019年・2018年のデータを載せています。下記図表2をご覧ください。
ここでは他年と比較して特に数値の大きさが目立つ項目を太字にしています。
上記からは、2019年の数字の大きさに比べて2023年で落ち込んでいるのがわかります。
先述した通り、2023年の桜シーズンが訪日需要回復途上であったことを思わされる結果でした。
2023年へのこれらのページへのアクセス数値は2019年比で約55%程度の数字となっており、この数字は、奇しくも両年の1~3月の訪日来客者数の比率とほぼ一致します。
なぜか、鎌倉の桜の人気が上昇(?)した2023年
続いて、各地域の桜スポットをより詳細に記したページのアクセス推移に触れます。
上記図表3の右下に記した合計の欄を見ていただければわかる通り、ここでも2023年の数値は落ち込んでいます。実数値で言うと約13万PVのマイナスです。
こちらも先程と同様、桜のシーズンがまだインバウンド回復途上であったことが理由として考えられます。
個別で見ると、特に落ち込んでいるのが東京のページで、2019年のだいたい1/3のアクセスとなっています。それほどではなくとも京都や大阪、名古屋などのページも2019年比より大きく数値を落としたページです。
これらに対して、2023年で他年よりも数値が伸びているページを、太字にしています。鎌倉、高山、奈良、岡山、長崎、鹿児島の6地域です。
桜スポットアクセスの総合計や東京のページのアクセスが大きく落ち込んでいる中で、これらのページのアクセスが伸びているのは、興味深い現象です。
なかでも鎌倉は2018年や2019年と比較して倍近いアクセスを獲得しています。
鎌倉のページへのアクセス詳細をグラフにしたものが下記図表4です。
3-4月前半の日本国内からのアクセスが突出して高いことが確認できます。
過去記事でも触れている通り、英語での情報発信をしているジャパンガイドへの日本国内からのアクセスの大半は外国人旅行者のものと想定されます。
そのため、「日本国内からこの時期に鎌倉の桜スポット情報を閲覧した」ということが言えるでしょう。
鎌倉の伸びの要因として考えられるのは、2023年の前にコロナ禍があったことです。
一般に2020年のパンデミック以前よりも一層、密を忌避しようとする傾向が旅行者に伺えるということが言われています。
例えば東京にいる旅行者が、東京の桜スポットが混み合うことを嫌い、より旅行者が少ないだろう鎌倉に向かったのが数字になって現れたのではないかと考えられます。
2023年時点ではまだそれほど大きくない数値ですが、今後一層インバウンドが上向いていったときにどうなるか興味深いところです。
2023年以外にも目を向けると面白い現象に気づかされます。
図表3では、他年よりも2018年の数値が特に大きいページを赤字にしました。該当ページは東京と京都の遅咲きスポットのページと、それから富士五湖と秋田県の角館です。
インバウンドが過去最大に伸びた2019年よりも、何故これらのページは2018年のほうがアクセスを獲得できたのでしょうか?
答えは開花時期にあります。
2018年は、例年でも類を見ない早い時期に桜が開花した年で、東京では3月17日に開花が観測されました。
桜を目当てで来る旅行者の多くは、訪日滞在地域のどこかで桜を楽しめるよう、事前に例年の開花時期を調べた上で、それに合わせて旅行計画を立てます。
ところが2018年は異常に開花が早かったため、計画的に訪日した旅行者のあてが外れてしまった一年でした。
こうした方々が、それでも桜を楽しむためにとったアクションが、東京や京都の遅咲き桜スポットや、より寒冷で開花時期が遅い地域のリサーチだったと考えられます。
桜を目当てに訪日される方が多くいる一方で、桜開花の時期にはどうしても訪日旅行の予定が立てられない人もいます。
また、先の鎌倉の例のように混み合うのを忌避する人も一定数いることでしょう。
そのような人達に向けて、東京などとは違う時期に開花する桜の情報を発信することで、桜の時期の誘客に繋げていくことも可能性としてはあり得そうです。
桜開花レポートの3年間の推移
最後に、桜関連でも一番の目玉コンテンツである開花レポートについて見てみます。
先述した通り、開花レポートは毎年全国各地を桜の時期に取材した内容を掲載している、速報性の高い記事です。
日本各地の開花状況をまとめたインデックスページがまずあり、その下に各地の開花状況詳細を記したページという構成になっています。
東京や京都など人気エリアの場合、開花状況にあわせて何度かに分けて取材を行うため、そのレポートページの数も多くなります。
下記の図表5ではそれら複数のレポートをエリアごとで一括してまとめてみました。
通常は日本全国様々な場所を取材するのですが、2023年度はコロナ禍明けで間もなかったため、取材先は東京・富士・金沢・京都・大阪・吉野の6地域に絞っての実施となりました。まずはそれらレポートの3年間のアクセス推移を表示します。
コロナ以前と比較すると、インデックスページの数値が大きく減少しているのが目につきます。この影響で、総合計のアクセス数値も減少しています。
こちらもまた、桜スポットページのアクセスと同様に、2023年桜シーズンはまだ下火だったインバウンドの状況が反映されたものでしょう。
他に桜スポットのページと同様の傾向が見られるものとしては、富士五湖についてのページも該当します。
2018年の富士五湖の開花レポートが他年よりも大きな数値を出しているのは、遅咲き桜情報を探していた人のニーズと噛み合ったから、と考えられます。
(吉野についてもおそらく同様でしょう)
再び2023年の数値の話に戻ります。
インデックスへのアクセスが落ちている一方で、6地域の開花レポートだけの小計では、2018年や2019年よりも数字が伸びているのが図表5から確認できます。
金沢・京都・大阪では大きく数値が伸びており、東京・富士・吉野では数値が2019年比で多少下がった程度です。
桜関連のページ全般のアクセスが落ちている中で、個別地域の開花レポートのページのみが好調という現象ですが、アクセスしている国の比率は2019年時とそれほど変わっていないことが確認できています。
つまり、どこかの国が突出して伸びているというわけではありませんでした。
ひとつの可能性として考えられるのは、桜についての基本情報ページやスポット情報のページと違い、開花レポートには速報性がある、という点による影響です。
つまり、「直近の旅行計画としては桜に関係するコンテンツは見ていない」ユーザーが、「速報性のあるニュースとして、開花の情報のみ見た」のではないでしょうか。
このようなユーザーがいる場合、その中には、一年後の春の訪日旅行を見据えているユーザーもいるかもしれません。
(パンデミック以降の旅行者の傾向のひとつに、旅行計画期間の長期化があります)
最後に
ここまで、ジャパンガイドの桜関連コンテンツのアクセス情報をまとめてきました。
2023年のアクセス数値からは桜の時期の訪日来客数状況の影響が、2018年のアクセス数値からは開花時期による影響が、それぞれ2019年の数値との比較から確認されます。
今年の桜シーズンは、2023年を大きく上回る旅行者で賑わうことになると思われますが、一方で東京や京都のような場所では、オーバーツーリズムの問題が常につきまといます。
先述したような混雑を嫌う旅行者の増加や、東京・京都などの開花時期に合わせた訪日ができない旅行者のことも考えると、様々な地域の桜について認知を向上させていくことが重要になるのではないでしょうか。