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訪日予定者9割に刺さる新たな旅のカタチ アドベンチャーツーリズム

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2023年3月31日(金)、観光庁が発表した「観光立国推進基本計画」の中で「消費拡大に効果の高いコンテンツの整備」という項目があり、その一施策としてアドベンチャーツーリズムの推進が挙げられています。
9月には北海道でアドベンチャートラベル・ワールドサミットの開催があり、今後アドベンチャーツーリズム(以下、AT)が重要な要素となっていくことが期待されています。

今回は、ATの定義のまとめと、そのポテンシャルについて調査したジャパンガイドユーザーへのアンケート結果の解説を行います。

経済効果90兆円の市場、日本はアジア1位のアドベンチャーツーリズム開発指標

まず、アドベンチャーツーリズムの定義について見てみます。一般社団法人アドベンチャーツーリズム協議会のwebサイトではこのように述べられています。

旅行者が地域独自の自然や地域のありのまま文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態です。“アドベンチャー”という言葉から、強度の高いアクティビティを主目的とすると連想されがちですが、アクティビティは地域をより良く知り、地域の方々との深く接する手段の一つであり、近年はハードなものより、むしろ散策や文化体験等のソフトで簡易なものが主流となってきています。

出典:一般社団法人アドベンチャーツーリズム協議会HP「アドベンチャーツーリズムとは」

以上を嚙み砕くと、アドベンチャーツーリズム(引用元に習って以下、AT)とは、次を満たすもの、と解釈できます。

・旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態
アクティビティの中で、地域独自の自然 or 地域のありのままの文化を体感する

このアクティビティについては、「Adventure」という言葉のイメージとは異なり、散策や文化体験等のソフトで簡易なものがトレンドであることも述べられています。

このようなATがどうして「観光立国推進基本計画」に掲載されたかについては、次のことが考えられます。

①ATは高い経済効果が見込める。
世界的な市場規模は6830億USD(2023年4月現在のレート換算すると90兆円以上)と言われており、これは旅行産業全体の30%ほどになります。(参照リンク)
②日本の自然資源に高い評価が寄せられている
2020年、ATの開発指標において日本はアジア1位となりました(世界では17位)。特に高いスコアだった自然資源は都市部よりも地方のほうが豊かに持っているものであることから、ATは地方のインバウンド誘客促進の面でも期待が持たれています。(参照リンク)
③ATは主に欧米豪富裕層の旅行形態であり、それらの人々の中で日本の人気が高い。
2019年に欧米豪9ヵ国の旅行者を対象として行われた調査にて、9ヵ国中7ヵ国で日本が行きたい国ランキング1位という結果が出ました。残りの2国でも日本は上位にランクインしており、AT志向の高い旅行者に魅力的な旅先であると言えます。(参照リンク)

続いて、ジャパンガイドユーザーを対象として行ったATの意向調査を解説します。

ジャパンガイドユーザーの約90%がアドベンチャーツーリズムと親和性の高い旅行者

図表1: ジャパンガイドユーザーの訪日経験についての調査結果
ジャパンガイド媒体情報資料より

図表1は、ジャパンガイドのユーザー概要です。欧米豪やアジアの英語圏の国々が中心ですが、そのうち8割以上が訪日経験者です。

このようなジャパンガイドユーザーを対象に、ATに関する様々な質問をしてみました。
アンケートに回答したユーザーは全部で292名で、構成は以下図表2の通りです。
欧米のユーザーが大多数で、年齢は比較的高めな層が多めです。また、全体の45%以上が米国平均世帯年収50,000USDを上回る結果から、比較的富裕な方々が回答しているのがわかります。

図表2: ユーザーアンケート回答者の構成

これらの方々からATに興味を持ちそうな人を抽出するため、まず2泊3日旅程プランを4種類提示し、一番好きなプランを選んでもらいました。選択肢は以下の通りです。

A. ショッピング&ハイライト観光のプラン
B. 自然の豊かな場所や歴史的な街並みの散策が中心のプラン
C. 離島の密林でキャンプやトレッキング、川遊び等アウトドア満喫プラン
D. 海辺のリゾートでゆっくりプラン

このうち、BとCの二つを選んだユーザーをATと親和性の高い層と想定しています。
集計は図表3の通りです。約8割がBのプランを選び、約1割がCのプランを選択しました。合わせると、ジャパンガイドユーザーから募った回答者の約9割がATと親和性の高い層と考えられる結果となりました。

図表3: ユーザーアンケート「一番好きなプラン」の回答集計結果

次に、BとCのユーザー250名の訪日旅行への期待の傾向を知るため、「次回訪日旅行でどんなことを実現させてみたいですか?」を複数回答可でヒアリングしたところ、下の図表4の通りになりました。
こちらでは、ローカルな食文化や伝統文化への関心の大きさが伺えます。

図表4: ユーザーアンケート「次回訪日旅行で実現したいこと」の回答集計結果

次に、「日本で興味があるアクティビティはどれですか?」と、同じく複数回答でヒアリングしました。こちらは合計の結果を図表5に、BとCそれぞれの中での回答の割合を図表6に表示しています。

図表5: ユーザーアンケート「日本で興味のあるアクティビティ」の回答集計結果
図表6: ユーザーアンケート「日本で興味のあるアクティビティ」のB&C層回答比率

図表5からは、軽いハイキングや伝統文化体験を望むユーザーが非常に多いこと、次いで野生動植物観察や酒造・蒸留所見学が多いことがわかります。一方で、ハード寄りなアクティビティは全体的に小さな数字となっています。
一方、BとCそれぞれの人数から回答者数の割合を出した図表6では、二つのクラスターで異なる傾向が見られます。Bは伝統文化や酒造などカルチャー志向の強いアクティビティの数値が高く、Cはハード寄りなアクティビティに関心を示す割合が相対的に高め、という結果になっています。

サイクリングは20-30代に、スノーアクティビティは東南アジアに:アクティビティごとの傾向

ここまでジャパンガイドユーザーのうちATと親和性の高そうな層のアンケート結果を見てきました。傾向として、ソフト寄りなコンテンツのほうがターゲットは大きく、よりターゲットの大きな市場を狙うのであればベターな選択であると考えられます。
ハード寄りなコンテンツは全体的に数字が低めな結果でしたが、それぞれのアクティビティごとのデータを見ていくと興味深い傾向が見られました。こちらでは特に顕著な例をいくつか挙げていきます。

・トレッキング

図表7: ユーザーアンケート「日本で興味のあるアクティビティ」トレッキング回答の内訳

日本でトレッキングすることに関心ありと答えたのは89名でしたが、居住地域ごとや年齢層ごとの何%がトレッキングに関心ありと答えたかを表示したのが図表7です。
欧米豪はいずれも3~4人に1人の割合という小さくない数字ですが、東南アジアでは45%の人がトレッキングに関心ありと答えています。
年齢では、20-30代はほぼ2人に1人の割合、40-60代にて3人に1人の割で関心ありという結果になっています。

・スキー/スノボー

図表8: ユーザーアンケート「日本で興味のあるアクティビティ」スキー/スノボー回答の内訳

居住地域の影響が出ており、東南アジアの回答者が4人に1人の割合でスキー・スノボーに関心ありと答えています。また、年齢では20代が最も高い割合で関心を示しているのが確認できます。(図表8)
東南アジアでの訪日スキー・スノボー熱は、ジャパンガイドで作成した動画「2-Day Winter Trip Sapporo」の視聴データでも同様の傾向が見られます。下記は札幌を拠点としてスノーアクティビティと観光を楽しむ旅程を提案した動画ですが、(ジャパンガイド動画ではアメリカからの視聴者が最も多いにも関わらず)視聴者の大部分が東南アジア系となっており(図表10)、東南アジアの訪日スキー・スノボー熱を感じさせられます。

Sapporo 2-Day Winter Trip 記事ページ
図表9:Youtube Analytics 2023/4/12時点のデータ参照

・サイクリング

図表10: ユーザーアンケート「日本で興味のあるアクティビティ」サイクリング回答の内訳

図表10の通り、サイクリングは若年層の支持が特に大きいのが確認できます。また、サイクルツーリズムの先進地域と言われる欧州に加えて、オセアニアでの割合が他よりも大きめな数値となっています。
こちらも過去の動画で確認できるデータがあります。富山県でのサイクリングのプロモーションを目的として作成された「Five Cycling Routes in Toyama」の視聴データ(図表11)をご覧ください。20代後半~30代前半の視聴者が全体の半分以上となっており、アンケートの結果と符合します。
居住地域についてはわかりにくいですが、注目したいのは欧州視聴者の平均再生時間です。欧州視聴者は他動画で見ても全般的に再生時間が短い傾向があるのですが、米豪と大きく変わらない結果となっている珍しい例です。

Five cycling routes in Toyama 記事ページ
図表11:Youtube Analytics 2023/4/12時点のデータ参照

まとめ

ここまで、アドベンチャーツーリズム(AT)の定義から始まり、そのポテンシャルをジャパンガイドユーザーアンケートデータから考えてみました。
回答者の9割近くがATと親和性ありという結果からも、今後の大きな可能性を感じさせられます。

本文中でもいくつか触れましたが、ジャパンガイドではこれまで度々ATのようなコンセプチュアルな旅を提案する動画を制作してきました。今後もそうした事例のデータから見えてくるものがありましたら別途紹介させていただきます。

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