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訪日観光客は今、本当に増えているのか? インバウンド来客数の中身を見る 

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4月17日に、今年1月~3月までの訪日旅行者消費動向の観光庁調査の速報が出されました。

観光庁:訪日外国人消費動向調査

こちらの調査は毎四半期ごとで実施されているオープンソースで、非常に細かく様々なことが確認できる内容となっています。
別途観光庁にて大まかな概要はレポートにされていますが、テーマを決めてデータをより細かく分析してみると面白いことがわかることが多いです。

今回は、オープンソース情報からインバウンドの現状を知るための例として、観光庁レポートからは読み取れない、より細かな内容をいくつかのテーマ設定をした上で見ていきたいと思います。

テーマは、以下を見ていきます。

①インバウンドが好調と聞くが、本当に「観光」目的の訪日来客が増えているのか?
②「観光」目的の各国旅行者の消費額はどの程度なのか?
③訪日滞在者達が何を求めて旅行しているのか?

 

訪日来客は増えているが、本当に「観光目的」なのか?

毎月の訪日来客数は、JNTOの統計で発表がされています。
今年の1~3月の訪日来客数推計値は、合計8,558,100人程度であったと言われています。
パンデミック以前に過去最高と言われていた2019年の同期間は8,053,797人でしたので、この数字はそれを塗り替えています。

しかし、この数字が本当に「訪日観光客」かどうかは、これだけだとわかりません。
もしかしたら留学やビジネス目的の渡航者が増えている可能性もあります。
その場合、インバウンドは観光とは違う方向で戦略を立てる必要性に迫られます。

そこで観光庁調査による訪日旅行目的の内訳を、シンプルに回答内容/回答者数で2019年、2023年、2024年の1-3月でそれぞれ可視化できるようまとめてみました。次のようになります。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2019、2023、2024

訪日来客の目的別比率は上記図表1のようになりました。
2019年と比較しても、目に見えて観光目的の旅行者が増えていることがわかります。
また、先述した通り総数は2019年8,053,797人→2024年8,558,100人で増加しているため、単純計算すると、2019年1-3月の訪日来客のうち「観光目的」の66.51%は5,356,580人となり、2024年の同値は6,608,564人となります。
おそらくは、現在進行形で訪日観光に史上最高の波が来ている、と考えられます。

それだけ観光目的の旅行者が増えたということは、経済効果の面でのポジティブな影響を見込めますし、逆にネガティブな要素として、特定の地域に一極集中してしまうオーバーツーリズム問題も過去最大規模になるリスクも考えなくてはいけません。

訪日目的別の内訳を主要訪日国別で見てみると、次のようになります。推移がわかるよう、2019年と2024年の1-3月のものを表示します。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2019
観光庁:訪日外国人消費動向調査2024

訪日旅行の数が大きく下がったままの中国と、教育旅行の比率が大きく増加したオーストラリアを除いて、各国軒並み「観光」目的での訪日が増えているのがわかります。
なかでも欧米各国の「観光」目的の伸びは非常に大きなものとなっています。

 

量を増やしたい欧米豪市場と、質を向上させたいアジア市場

ここまでで、訪日来客が増えている中でも特に「観光」目的の旅行者が本当に増えていることが数字からも確認できました。
では次に、観光目的の訪日旅行者は、本当にお金を使ってくれる人達なのか? 「観光目的」の旅行者のみの消費額を見ていきます。

観光庁調査では観光目的のみの人々の一人当たり旅行消費単価を出してくれています。
各年のものを計算しつつまとめると次のようになります。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2024

このようになりました。
教育旅行を除き、どの旅行目的も2019年より消費単価が伸びているのが確認できます。
とはいえ、図表1によると最大のカテゴリーである旅行目的「観光」の層について見ると、2024年1~3月の消費は18万円程度です。
伸び方は順調そうに思えますが、政府が2025年までの目標としている旅行消費単価の数値は20万円なので、この3か月に限って言うと少し下回っている格好です。
先程も見てきた通り、旅行目的「観光」は訪日者の最大層であるため、ここをどのように引き上げていけるかが今後の日本のインバウンドの大きな課題となるでしょう。

また、ハネムーン旅行の消費効率の良さがよくわかるデータにもなっています。
現状、数は少ないですが、今後力を注いでいく価値のある分野と言えるでしょう。

先程の図表4は各国の数値を総合したものとなっていますが、続いて、各国の「観光」目的旅行者の消費単価の実態を見ていきましょう。以下図表5をご確認ください。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2024

こちらでは、主要各国の消費単価を、「観光」目的旅行者に限ったもの(青)と、それ以外の目的もひっくるめたもの(橙)と比較できるように掲載しています。
青>橙になっている国は、「観光」目的での旅行が他の旅行形態よりも良い経済効果を生んでいる市場といってもよいでしょう。

先述した2025年までの政府目標である消費単価200,000円に赤線を引いています。
棒グラフがこちらを突き抜けている項目は十分な消費効率となっているためより数を集客していきたい市場、下回っているところは数よりも消費効率を改善していきたい市場です。
主に欧米豪やシンガポールなど、ジャパンガイドがメインターゲットとしている英語圏市場は目標旅行消費単価を既に越えていることがわかります。

理想は、一番右に黒と灰色で表示している全国籍の項目が赤線を越えることです。
そのためには、ざっくり言うとアジア圏市場の消費効率を高めていくことと、欧米豪圏市場の旅行者の数を増やしていくこと、この両面でのアプローチが重要になりそうです。

ちなみに、ベトナムの「総合」が非常に高く見えますが、こちらは超長期滞在である留学の数値が大きいためです。
親戚・知人訪問や留学が目的の旅行の場合、このように超長期滞在で、1日あたりの消費は小さいのに「一人あたりの消費単価」が異常に大きく見えてしまうケースもあるので、注意が必要です。

 

日本食を楽しみにする訪日する旅行者は全体の約9割

他にも観光庁統計では市場ごとの平均泊数や消費項目、予約方法、訪日リピーター率などといった項目を見ることもできます。
これらはいずれも市場毎での地域誘客の見込みや収益性などを考える際の参考となる情報になります。

また、毎年3月には前年の訪日旅行者意識調査や都道府県毎の訪問者率も発表されます。
本稿では最後に、インバウンド誘客を目指す地域が参考として、各市場毎の需要のおおまかな特徴を見ることができる2023年の意識調査結果をとりあげさせていただきます。

まずは、各国旅行者達が訪日前に期待していたことを複数回答可で挙げてもらった結果がこちらの内容です。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2023「訪日前に期待したこと」

まず、どの国においても「日本食」への期待が極めて大きいことがわかります。
今回は8か国に限定しての紹介ですが全国籍での結果も87%超となっており、「食」がキーになっていることがわかります。
「自然・景勝地」や「繁華街」「ショッピング」も総じて高めの水準にあります。
市場による差が大きく出ているのは「歴史・伝統文化」「日本酒」で、欧米豪圏の人々が特にこれらの要素を強く求めていることが感じられます。

同様の質問を、最も期待したことに絞ってひとつだけ回答してもらった結果が以下の図表です。

観光庁:訪日外国人消費動向調査2023「訪日前に最も期待したこと」

こちらの回答でも、どの国でも共通した傾向として日本食が最大票を集めているのがわかりますが、2番手以降は国によってまちまちです。
欧米豪では「歴史・伝統文化」が高いのに対して、アジア圏では「ショッピング」「テーマパーク」などが人気です。
オーストラリア独自の傾向として「スキー・スノボー」人気が高い点も注目です。

ところで数字を見ると、期待していたものをすべて答える複数回答ではどの市場においてもだいたい80%、90%の数値であった「食」が、最も期待したものを一つだけ答える形式では半分程度のパーセンテージに落ち込んでいるのがわかります。
この傾向は「食」に限らず、ほとんどんの項目においてあてはまります。
特にギャップが激しいのは欧米豪市場における「日本酒」「ショッピング」「ミュージアム」などです。
対して、アジア市場における「テーマパーク」やオーストラリアにおける「スキー・スノボー」はギャップが比較的少ない項目です。

上記調査はあくまで市場による傾向を見るためのもので、同じ国でも人によってや旅行形態によって等で求めるものは変わってきますが、全体を見るには参考になります。
こういったところからさらに深めていって、「食」「自然」「伝統文化」と言うけれども具体的にどんなものを求めているのか? を市場毎で深めていくことで、地域で提供できるものと旅行者が求めていることとの適切なマッチングも可能になるのではないでしょうか。

具体的な誘客施策として、ジャパンガイドでは欧米豪旅行者の中でも訪日リピーターとなるような層が「日本の田舎の原風景」を求めていることを踏まえた動画プロモーションを実施したことがあります。

japan-guide.com公式Youtubeチャンネル「Finding rural Japan in Niigata」


制作した動画は本当の日本の田舎らしい情景を見せつつ新潟への旅程を提案する内容になっており、公開以来で13万再生、いいね数3148を記録しています。
さらには「新潟に行きたくなった」というようなコメントが多く寄せられており、新潟について知ってもらうこと、需要喚起することができた一例となりました。 

 

最後に

2024年のインバウンドが、単に来日者が増えているだけでなく、明確に「観光」を目的とした旅行者が増えていることを中心に、滞在中の消費や訪日需要の中身について見てきました。
まだ消費の面では課題も残されているものの、訪日観光がかつてないほど好調にあることは数字からも確認できたのではないでしょうか。

記事中でも触れた通り、数が訪れているアジアの市場は消費効率の改善、消費効率のよい欧米豪の市場については数の増加に取り組んでいくことが重要と考えられます。

ジャパンガイドのメインターゲットは後者にあたりますが、欧米豪向けの誘客に取り組みたい地域のご担当者様は、ぜひ欧米豪市場への取り組みについてはお気軽にご相談ください。

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