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インバウンド解禁以降の訪日旅行者の関心事項の分析

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昨年秋の訪日個人旅行解禁以降の各国における訪日需要の推移を分析した前回記事に続いて、本稿ではこの一年間のインバウンド需要の中身について、ジャパンガイド上でよく見られているコンテンツのデータを基に分析していきます。

JRパスと関西観光情報が数値を伸ばした1年

まず、サイト全体としてのアクセス推移がわかるグラフと表をご覧いただきます。

図表1:ジャパンガイドUU数・PV数推移
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30 & 2018/10/1~2019/09/30

上記図表1は、コロナ禍前の2018年10月~2019年9月と、コロナ禍が明けて訪日個人旅行解禁されて以降の2022年10月~2023年9月のジャパンガイドのユニークユーザー数(UU数)とページ表示数(PV数)の推移を表示したグラフと表です。
グラフを見ると、サイトに訪れているUU数では2023年とコロナ前の2019年ではそれほど大きな差異はない一方で、PV数に大きな開きが生じているのが確認できます。つまりユーザー数は大きく変わっていないのに、ユーザーあたりで見るページの数が減っているという状況です。
上記の表やグラフが示すコロナ禍前後の変遷を、PV数という観点でまとめると次のようになります。

PV数:8,162万→6,136万 (約75%)
UU数:1,986万→1,854万(約93%)
ユーザーあたりのPV数:4.11→3.30(約80%)

この原因については様々な要因が影響しているものと思われますが、サイト全体のPV数がコロナ前の75%に減少したことを踏まえながら、以下この1年間でユーザーがよく見ているページを見てみます。下記の図表2をご覧ください。こちらは2022年10月~2023年9月の期間でのジャパンガイドでよく見られたページトップ40です。

図表2:ジャパンガイド よく見られたページトップ40
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30 & 2018/10/1~2019/09/30
 *1: 「桜開花予報」は、2019年データと比較しています。
 *2: 「災害情報」「コロナ関連マナー」「JRパス料金改訂」はコロナ禍以降のコンテンツです。

この図表では、サイト全体としての2018-2019の同期間比である”75.18%”を基準値として、基準値より上回る推移を見せたページを薄い青に、基準値を下回る推移を見せたページを薄い赤に、色分けしています。また、増減値が+に転じたページは濃い青にしています。

上位にランクインしているページはメインターゲット層である英語圏ユーザーの需要が反映されたものと考えられますが、なかでもJRパス関連のページが大きく伸びたのがこの一年間の特徴です。久しぶりの訪日旅行を長期にわたって様々な場所に訪れる形で楽しんだユーザーが多かったのではと想像されます。また、10月でJRパスの料金改訂が為されるというニュースの影響もあったことでしょう。
また、「東京」のページが数値を落としたのに対して関西圏の観光情報ページが「大阪」「奈良」「伏見稲荷」など大きくアクセスを伸ばしていることも伺えます。

PV数を大きく減少させたページのうち特に数字の大きさが目につくのは、「桜開花予報」「目的地一覧」「フォーラム」の3つです。
「桜開花予報」は桜開花の情報を一覧にしたもので、「的地一覧」は訪日計画作成の一助となるように観光エリアを一覧にしたページ、「フォーラム」は訪日旅行を中心にユーザー同士で様々なトピックについて相談できるサービスです。いずれも人気コンテンツですが、2018-2019年同期間のPV数に対して40%~60%未満の数字に落ち込んでいます。
これら3コンテンツはリンクで他ページに飛ぶことの多い仕様であるため、ユーザー数がそれほど変わっていないにも関わらずPV数が大きく減少した要因のひとつとして、この3コンテンツの閲覧数減少があると考えられます。

英語圏主要5か国の訪日旅行者の需要分析

前回同様にジャパンガイド主要ターゲット国に絞る形で、この1年間のよく見られたページを見て行きます。

直近1年間の米国の訪日需要分析

まずはトラフィック全体の20%近くを占める米国からのアクセスについて、以下の図表3をご覧ください。
よく見られている1~9位までのページは、順番こそ違いますが図表2のサイト全体のものとほぼ同じ顔触れです。そのうちJRパス関連コンテンツや東京の情報へのPVが高めですが、京都・大阪・奈良など関西方面のコンテンツは少し低めになっています。

図表3:ジャパンガイド 米国からよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30

こちらの図表ではPV以外にも様々な数字を並べていますが、左から順に次の通りです。
・PV数(米国):米国から該当ページを表示した回数合計
・UU数(米国):米国から該当ページを訪れたユニークユーザーの数
・UU毎のPV数(米国):米国のユニークユーザー1人につき該当ページを開いた回数
・米国のPV占有率:全ユーザーの該当ページ表示数に対する米国からの表示数の比率
・全体のPV数:全ユーザーの該当ページ表示回数合計

以下はPV占有率に注目してみていきます。この図表では、サイト全体における米国のPV占有率である「18.90%」を基準として、 米国のPV占有率 > 18.90% であるページを青で表示しており、そうならないものを赤の背景色にしています。また、サイト全体のPV占有率18.90%と比較して著しく数値が高いもの(1.5倍以上)は太字としています。サイト内の米国アクセスが18.90%であるのに対して、それよりも高い割合を示しているページは、米国人ユーザーからの需要が高めな傾向にあると考えられます。

このようにして見て行くと、「日本の歴史」は、特に米国ユーザーに関心を持たれるテーマであるというのが伺えます。また、富士登山ガイド」閲覧の3割近くが米国ユーザーであることから、この1年間、富士登山が米国ユーザーに特に関心を持たれるアクティビティであったと推定されます。

直近1年間のカナダの訪日需要分析

図表4:ジャパンガイド カナダからよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30

こちらはカナダのデータです。米国の結果と共通する傾向が多く見られますが、JRパス系コンテンツに加えて「訪日時季情報」や「成田空港」ページにもサイト全体のカナダ人率3.83%を大きく上回るアクセス率を有しているのが特徴です。富士登山へのPV占有率が高めなのも米国と同様です。
「成田空港」ページをカナダユーザーの多くが見ている点は、特有の傾向です。この1年間の欧米豪の国々からの訪日旅行者の羽田空港利用率が大きく向上しているのが観光庁発表データから読み取れるのですが、直行便の本数の都合でカナダは9:1に近い割合で成田利用に偏っており、図表4の結果にもその影響が出たものと考えられます。

直近1年間の英国の訪日需要分析

図表5:ジャパンガイド 英国からよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30

この一年間の英国ユーザーからのトラフィックの大きな特徴は、「訪日旅行時季」ページの表示が非常に多かった点です。サイト全体における英国ユーザーのPV占有率が4.16%程度であるのに対して「訪日旅行時季」ページでは11.85%と大きく、ほぼ10人に1人の割合で英国ユーザーがこのページを見ていることになります。サイト全体におけるUU数がほぼ同等のカナダ(6.33%)と比較しても、英国ユーザーが特にこのページを参照していることがわかります。
このページはタイトル通り、訪日旅行の時季を検討するためのコンテンツです。前回記事にて英国での訪日旅行数は回復途上であるという状況に触れましたが、訪日意欲はあるが実際にいつ旅行するか検討中、という英国ユーザーが相当数いるのではないかと考えられます。
JRパス料金改訂」や「コロナ関連マナー」など、ニュース係記事へのアクセス比が多めである点も、上記のようなユーザー像を想起させられます。

直近1年間のオーストラリアの訪日需要分析

図表6:ジャパンガイド オーストラリアからよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30

図表6は、オーストラリアのこの一年間の傾向です。前回記事にて、オーストラリアは米国やシンガポールなどと比較して少し遅めに訪日旅行需要が回復した国であることに触れましたが、英国同様に「訪日時季情報」の記事にオーストラリアからのアクセスが多かったのはその現れでしょう。
首都圏や関西圏の観光情報に偏りがちだった欧米と比較して、「広島」「金沢」「高山」「名古屋」等より幅広い観光エリア情報を見ているのもオーストラリアの特徴ですが、この点はコロナ禍以降も変わりません。
交通情報や観光情報を中心に、幅広くよく下調べした上で訪日旅行計画を立てているユーザーが多いことを伺える結果になっています。

直近1年間のシンガポールの訪日需要分析

図表7:ジャパンガイド シンガポールからよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2022/10/1~2023/9/30

続いて、訪日需要の回復が非常に早く、この一年間で米国の次にジャパンガイド利用者が多かったシンガポールのデータです。「名古屋」ページの順位の高さ・PV占有率の高さがまず目につきます。20位以内に「神戸」「北海道」などが入ってくるの欧米とはテイストが異なり、訪日リピーター率が高いシンガポールならではの傾向です。
日本の鉄道パス一覧」のページがほぼ5-6人に1人の割合でシンガポールユーザーから見られているのも、様々な地方への旅を下調べしているからこその傾向と考えられます。今年10月からはJRパスの料金改訂も開始されたため、各地の鉄道パス情報を入念にチェックする旅行者はシンガポールに限らず、今後増えていくと思われます。
米英カナダと違ってトップページのPV占有率がサイト全体より低めである点も注目したい点です。この傾向はオーストラリアも同様でしたが、両国に共通するのは地方観光エリアページへのアクセス率の高さです。トップページからではなく、Google検索等で地域名やスポット名で検索して直接そのページから流入しているユーザーが多いためそのような結果になるもの、と考えられます。

まとめ

ここまで、入国規制緩和が為された昨年10月から1年間の、各国毎によく見られているページを見てきました。各国の特徴がよく現れた結果になっていたのではないかと思われます。
こちらの記事については、各国のアクセス状況の推移を訪日来客数と併せて分析した前回記事内容も踏まえると、より一層この一年間のインバウンドの状況への解像度が上がることと思われますので、ぜひそちらも併せて御覧ください。

また、最後にサイト以外で行っているジャパンガイドの情報発信の紹介をさせていただきます。
10月の頭に、ジャパンガイドのYoutubeチャンネルではJRパスの料金改定に関連して、その代替手段を提案する動画を公開しました。こちらの動画は公開2か月で早くも約7万回の再生数となっており、多くのコメントが寄せられています。

Youtube:japan-guide.comチャンネル「Japan Rail Pass ALTERNATIVES | Saving Money on Transportation」

先にも触れましたが、JRパスの料金改訂の影響もあって、もっとリーズナブルな地方のレールパスを検討するなど、今後旅行者の動き方は変わっていくことが予想されます。このことは、長期旅行をする欧米豪圏の旅行者に特に顕著に現れる傾向になることでしょう。

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