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過去20年間で最高潮 インバウンドで”onsen”の注目が上昇中

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コロナ禍前以上に、注目を集めつつある温泉

インバウンドにおいて、温泉の注目度が上がっています。

以下はGoogle Trendにて2015年1月から現在までの相対的な検索回数推移です。
青の線が”onsen”で、比較としてインバウンドでの利用頻度の高い”narita”、”haneda”という二つの国際空港を橙色と灰色で表示しています。

直近では”narita”や”haneda”という、日本での入出国に関して検索されることが多いキーワード2つを抜いて、”onsen”のほうが検索されていることがわかります。

図表①:「Onsen」キーワード検索比率の推移
※Google Analyticsデータ参照: 2004年1月-2024年12月

傾向としてはインバウンドの発展とともに伸び、パンデミック下で下降した後、再び上昇して2019年時よりも検索されているのが伺えます。特に今年に入ってからはシーズンによる上下はあるものの過去最高の水準となっています。

ちなみに、ここでは見やすいよう10年間のデータを表示していますが、Google Trendで見ていただければ、過去20年間で現在が最も”onsen”が検索されていることを確認できます。

japan-guide.comには温泉の概要を紹介した「温泉」のページがあるのですが、こちらへのアクセスデータでも同様に、この1年間で”onsen”の関心が上昇している傾向が確認できます。以下図表②をご確認ください。

図表②:ジャパンガイド 「温泉」ページアクセス推移
※Google Analyticsデータ参照: 2023年1月-2024年12月

こちらは「温泉」のページの表示回数(PV数)を2023年と2024年で各月毎に出したものです。全ての月において2024年度の数値が前年を上回っているのが確認できます。

ここまで、インバウンドにおける温泉への関心の高まりを見てきました。
それでは温泉に関して具体的にどのような情報が、訪日旅行を計画しているユーザーに見られているのでしょうか? 次の章で解説させていただきます。

 

秋田の秘湯、乳頭温泉が対前年+800%超の伸び

ジャパンガイドには、温泉そのものについて解説するページと、各地の温泉地を紹介したページとがあります。
下記図表③は、それらを閲覧するユニークユーザー数(UU数)の直近1年間と、その前の一年間とをページごとで比較したものです。

図表③:ジャパンガイド 温泉関連ページアクセス推移
※Google Analyticsデータ参照: 2023年12月-2024年11、2022年12月-2023年11月

下段の具体的な温泉地名は、直近1年間のUU数の多い15ページを抜粋しています。
ゴールデンルートを巡ることの多い欧米豪圏の旅行者にとって最も馴染みがあるのは箱根ですが、「箱根温泉」の数値は微増に留まっています。
それよりも秋田県の「乳頭温泉」、九州の「別府温泉」や「黒川温泉」などが大きく数値を伸ばしている点に注目です。
決して大多数というわけではないものの、地方の温泉地を求める旅行者が英語圏ユーザーの間で増えているのだと考えられます。

ちなみに、対前年増減比では数字が大きく後退しているように見える山形県の「銀山温泉」は、ジブリ作品を思わせる街並みで注目を集めた地域で、ジャパンガイド上では昨年に閲覧者数をそれまでの倍に大きく伸ばしていました。
昨年と比較すると下降しているものの依然として数値は高いままで、人気が落ちたというよりもバズが大人しくなったような状況と考えられます。

訪日旅行者が特定の温泉を目当てに行先を選ぶ例が増えていけば、地方への誘客促進にもポジティブな影響があることでしょう。

 

具体的な温泉地名以上に、訪日旅行者にとって重要な情報

温泉地個別ページの推移以上に注目は、図表③上段の橙色枠に表示している温泉そのものを説明しているページの伸びです。特に伸びているのは「入浴の仕方」ページで、対前年+140%となっています。

こちらのページでは、例えば以下参照画像のように、日本人には当たり前のことでも外国人には知られておらず、それでいて知っておかないと困るような類の情報を載せています。

参照画像:japan-guide.com「How to take an onsen bath」

外国人旅行者の中には、既に乳頭温泉や黒川温泉など地方の温泉地を目指して旅を計画する人もいる一方、大多数はこのようにもっとベーシックな情報を必要としているものと思われます。

温泉そのものを説明したページへのアクセス数値を見比べて興味深いのは、対日本人の宣伝で言及されることの多い泉質に関する情報(「温泉の泉質」ページ)などよりも遥かに、上記の初歩的な情報のほうがよく閲覧されている点です。
このことは、訪日外国人に日本の温泉がどのように受け取られているかを表しています。

日本の温泉文化は特殊です。そのことは、言葉にも現れています。
自然の中で湧き出る温泉のことを、英語では”hot spring”と言います。しかし、近年では日本の温泉についてだけは英語でも”onsen”と表現されることが多くなってきました。
それだけ日本の温泉が特殊なもので、英語圏の一般的なイメージの”hot spring”とは異なると考えられているが故でしょう。
訪日旅行者にとって”onsen”というのはただの”hot spring”ではなく、異文化体験も込みで認識されている場合がほとんどです。
そうした文化的ギャップの要素は、訪日旅行者にとっては期待する要素でもあり、不安要素でもあります。
インバウンドで温泉をもっと多くの人に楽しんでもらい、温泉をフックに各地への誘客や訪日リピーター増を実現していくには、文化的ギャップによる不安要素を情報発信によって小さくし、異文化体験を楽しんでもらいやすくすることが重要でしょう。

 

動画で解説する温泉文化

ジャパンガイドの公式youtubeチャンネルでは、2024年に合計21本の動画を制作・公開していますが、その中で最もよく見られたのは次の動画でした。

japan-guide.com 公式Youtubeチャンネル: Bathing at a Japanese Hot Spring

こちらの温泉についての解説動画『Bathing at a Japanese Hot Spring』は、9月に公開され、12月現在で10万再生に達しました。
動画前半部分では温泉とは何であるかの説明と、エチケットや入浴の仕方を紹介しています。
先程紹介させていただいた「入浴の仕方」のページで紹介されているような情報を、アニメーションなども入れてよりわかりやすく解説した内容です。
後半部分では草津温泉を筆頭に、全国の代表的な温泉地や温泉街を紹介しています。

温泉は日本の各地方が有する固有の貴重な観光資源ですが、インバウンドの文脈では紹介の仕方が非常に難しいコンテンツでもあります。
タトゥーの問題や他者と同じ空間で裸になることへの懸念などから、温泉とインバウンドは相性が悪いと言われていた時期もありました。
様々なハードルがある一方で、数値から見える限り、現在進行形で温泉への注目は上がっています。
そんな温泉を、インバウンドで紹介する方法の一例として、ぜひ参考までに動画も視聴してみてください。

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