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最新統計から見る、2023年の都道府県別宿泊・訪問の現状

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2024年6月28日(金)、観光庁による宿泊旅行統計調査の2023年確報が出されました。
こちらは宿泊施設での調査をベースにした統計で、これを見れば都道府県ごとの宿泊の傾向が把握できます。
旅行者が宿泊するかどうかは、旅行者の行動を予測し、どれだけのお金を落としてもらえるかを考える上で、とても重要な情報です。
今回はこの最新の宿泊統計と訪問状況も比較参照しつつ、インバウンドの現状を分析していきます。

 

宿泊数で見る都道府県ごとのインバウンド分析

まずは、公表されたばかりの2023年宿泊統計の確報から、インバウンドの数字を見ていきます。下記の図表①②の宿泊実人数のグラフと表をご確認ください。

図表①:都道府県別訪日外国人宿泊実人数グラフ
 *観光庁宿泊旅行統計調査より
図表②:都道府県別訪日外国人宿泊実人数一覧
 *観光庁宿泊旅行統計調査より

トップ3は東京都(1,975万人)、大阪府(1,028万人)、京都府(617万人)というゴールデンルートの目的地・滞在地となりやすい3都市が並びました。
その後は北海道(446万人)、福岡県(330万人)、沖縄県(224万人)と続いています。
数字で見ると東京の一強と言える結果で、2番手の大阪ですらその半分程度の宿泊者実数に留まっています。

トップ3とそれ以外との差も大きく、1都2府の合計宿泊者数と、北海道+全県の合計宿泊者数では前者の数が上回ります。
また、1都2府以外の地域間での差も大きく、最下位となってしまった島根県(3.8万人)の宿泊者実数は、北海道の1/100未満という結果です。

インバウンドの目的の一つとして、訪れた旅行者にお金を落としてもらうこと(旅行消費)があります。
旅行消費額に関して、宿泊者数はキーファクターとなる要素です。
しかし上記図表のような東京都の宿泊者数の大きさを踏まえると、地方における宿泊者数はまだまだ伸び代のある分野であると考えられますので、滞在を増やしていく試みが地方のインバウンドでは重要となっていくでしょう。

 

訪問数と宿泊数のバランスのチェック

観光庁が測定した都道府県毎の訪日旅行者の訪問率「Visit Rate」と、そのVisit RateにJNTOが出した年間訪日来客数合計の25,066,350人を掛けた数値を「見込み訪問者数」として参考までに以下図表③④に掲載しています。

こちらで見てみると、京都府以上の数を千葉県が出している点や北海道以上の数を奈良県が出しているのが目につきます。前者は成田空港やディズニーリゾート、後者は奈良公園界隈を利用し、同一県内で宿泊はしていない人が多い故の結果と考えられます。

図表③:都道府県別見込み外国人訪問率グラフ
 *観光庁訪日消費動向調査より
図表④:都道府県別見込み外国人訪問者数一覧
 *JNTO訪日来客数統計・観光庁訪日消費動向調査より算出

ただし、2023年の「Visit Rate」はコロナ禍の影響で年間の統計ではなく2023年4月~12月であること、また観光庁調査に協力した人のみから算出したものであって実際の数値ではないことに注意が必要です。
そのため、実宿泊者数と見込み訪問者数との間で逆転現象が起きている都道府県も散見されます。
以下図表⑤は、宿泊実人数/見込み訪問者数の比率です。本来宿泊者数が訪問者数より多くなることは考えにくいのですが、上記の事情で100%を超える都道府県も多発しています。
正確な数値として厳密に見るよりはあくまでも参考として見るに留めたい数値ではありますが、見込み訪問者数と宿泊者実数を並べてみると、都道府県ごとの宿泊/訪問のバランスを考察することができます。

図表⑤:宿泊実人数/見込み訪問者数比率
 *JNTO訪日来客数統計・観光庁宿泊旅行統計調査・訪日消費動向調査より算出

先述した奈良県や千葉県に加えて埼玉県や兵庫県、山口県などで特に数字が小さいのが確認できます。
千葉県には成田空港やディズニーリゾートがあり、埼玉県では川越が近年人気の訪問先となっています。おそらく宿泊先は東京で、これらの地と行き来する旅行者が多いのだと考えられます。
同様のことは兵庫県や奈良県にもあてはまり、奈良公園界隈や神戸、姫路などを京都・大阪から目指す旅行者が多数いるものと予想されます。
山口の場合は福岡や広島泊の旅行者が日帰りで訪れている可能性が高そうです。

既に多数の旅行者が訪れているものの宿泊者が少ない地域は、既に旅行者からその価値を認知されているにも関わらず宿泊の価値を認識されていないと言えます。
ここから宿泊数を伸ばしていく場合、「日帰りで楽しめる場所」という認知に対して、その地に滞在する価値や意義をどう見せていくかが鍵となることでしょう。

対して、図表②④の宿泊者数・訪問者数ともに最下位付近に位置する県については、その域内を訪問する価値が残念ながらまだあまり訪日旅行者に伝わっていないものと、数値上から考えられます。
そのため、まずは知ってもらい、関心を持ってもらうことが重要なステップとなりそうです。

 

最後に

観光庁最新の宿泊統計を元に、都道府県毎の訪問/宿泊の状況を見てみました。
先述の通り、地域での消費額の向上には滞在がキーファクターとなります。

本文内では、統計から見える都道府県ごとの課題にも触れました。
訪問数が多いわりに宿泊数が少ない地域については、宿泊価値をどのように訴求できるかという悩みがある一方で、双方ともが少ない地域の場合はまずどのように知ってもらい、来てもらうかの問題があります。

今年の6月、ジャパンガイドでは関西から高野山を訪れ、宿坊に滞在する動画を発表しました。
都市部からのアクセスが難しいにも関わらず高野山は人気の目的地で、その宿坊はジャパンガイドのウェブサイト上でも高いクリック率を誇るコンテンツです。
今回の動画では上記のような高野山の特徴を意識して制作しています。

japan-guide.com公式チャンネル「Koyasan Overnight Trip From Osaka」

インバウンド向けで地域をプロモーションする際にどのような見せ方・紹介の仕方をするのかについて、ぜひ参考までにご覧ください。

今回は「インバウンド」として一括して見てみましたが、こちらを欧米豪や東アジアなど、ターゲット市場をある程度まで絞って分析すると、さらに面白い発見が見られるでしょう。(欧米豪圏に関しては、追って実施を検討しています)

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