パンデミックによって訪日旅行客の行動に変化は起こるのか? ~ジャパンガイド独自アンケート結果~
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国境再開後の訪日旅行に対する意欲や、パンデミックによる訪日旅行中の行動の変化の調査を目的としたアンケートを、japan-guide.com(以下、ジャパンガイド)のユーザーを対象に実施しました。
アンケートの回答期間は2021年9月22日(水)から2021年10月20日(水)までの約1ヶ月間です。
回答数は合計103で、主な回答者の居住国は欧米豪圏の英語を公用語とする国々(アメリカ、イギリス、オーストラリア等)が中心です。
【今回のアンケート調査からわかった3つの主なポイント】
・今回のアンケート対象者は訪日意欲が総じて非常に高く、約80%は国境再開直後にでも訪日をしたいと考えている。
・パンデミックによる欧米豪圏からの訪日観光客の大きな行動変容は考えにくい。
・訪日観光客が新型コロナウィルスに対して過度に神経質になる可能性は低いが、混雑緩和、地方への送客、施設ごとの感染症対策などは引き続き取り組む必要がある。
高い訪日意欲、パンデミックによる旅行期間への影響は見られず
まず、「Q1 国境が再開したら日本を訪れたいですか?」という質問に対し、「はい、とても」が79%、「はい、ただし国境再開直後ではない」が18%という回答結果となり、回答者全体の97%が国境再開後の訪日意欲を有していることがわかりました。
「Q2 どのくらいの期間旅行したいですか?」という質問に対しては、回答の割合が多い順に「7-13日」30%、「14-20日」28%、「21-30日」22%、「60日以上」11%、「31-60日」8%、「1週間未満」1%となりました。
この結果はパンデミック以前に行ったジャパンガイドのユーザー調査の結果と概ね同じでした。例外は「1週間未満」と回答した人の割合で、今回のアンケート結果では、以前のユーザー調査結果時の10分の1程度に留まりました。
訪日旅行者の行動に大きな変容は起こりにくいと考えられる。しかし、適切な感染対策は国境再開後も継続すべし
「Q3 パンデミックがあなたの国境再開後の旅のスタイルに影響を与えますか?」という質問に対しては、「はい、とても」がわずか1%、「はい、多少は」が30%となった一方、「いいえ、そんなに」が20%、「いいえ、まったく」が22%、そして「わからない」が26%となりました。
この結果から、パンデミックが訪日旅行者の行動に与える影響には個人差はあれど、極端な行動変化が起こることはは考えにくいと思われます。
続けて「Q4. それはどのような影響ですか?(複数選択可)」という質問に対しては、回答の割合が多い順に、「混雑やピーク時間帯の回避」60%、「適切な感染対策が取られた場所を選ぶ」49%、「一人もしくは少人数で旅行する」36%、「都市を避けて田舎を旅行する」29%、「公共交通機関ではなく車や自転車を使用する」8%、「旅行期間を短くする」2%という結果でした。
混雑の緩和や都市から地方への送客はパンデミック以前から観光業界の課題として挙げられていました。これらの解消に取り組むことは感染症対策となるだけではなく、パンデミック終息後の観光業にも大きなプラスの影響を与えるため、この機会に取り組みを加速したいところです。
「公共交通機関ではなく車や自転車を使用する」が8%に留まったのは意外に思えるかもしれません。この背景にはジャパンガイドのユーザー層の特徴が関係していると思われます。前述の通り、ジャパンガイドのユーザーは欧米豪圏の人々を中心としています。ハンドルと車線の向き、道路システム・標識、交通マナー、道幅など、日本の運転環境はこれらの国々と異なる点が多く、訪日旅行中に自分で車を運転することに抵抗を感じる人々は少なくありません。Visit Japan大使であるジャパンガイド編集長のステファンも以前、「右ハンドルの国からの観光客は、レンタカーを使用することに抵抗がある」と述べています。
「Q5 国境再開後の訪日旅行ではどんなアクティビティをしたいですか?(複数選択可)」という質問に対しては、「食事」83%、「伝統文化」77%、「自然」76%、「都市部への旅行」70%、「温泉」68%が上位を占めました。
2017年のジャパンガイドのユーザー調査の結果と比較して、「食事」に対する関心が大きく高まっています。また「自然」が76%となっている一方で、その対極にあると考えられる「都市部への旅行」も70%となっています。欧米豪圏の人々はアジア圏の人々と比べ、一回の訪日日数が長く、多彩な楽しみ方を求めていることがわかります。
狙い目の観光市場は、観光地と真逆の環境で暮らす人々?訪日リピーターでも、東京と京都だけは旅程から外せない?
最後に、「Q6 日本で最も訪れたい場所は?」という質問に対しては、1位が東京の35%、2位が京都の15%、3位が札幌の5%、4位に大阪、金沢、沖縄が4%で並ぶという結果でした。東京や京都のような観光資源が豊富で国際的知名度も高い都市が上位に来るのは自然なことです。
しかし、わずかな差ではあるものの、札幌が大阪よりも上位に位置している点、金沢が大阪・沖縄と並んで4位にランクインしている点は興味深く感じます。そこで札幌と回答した人の国籍を確認してみたところ、インドネシア、オーストラリア、カナダ、フィリピン、その他は無記名でした。カナダは例外ですが、割と温暖な南の国々ほど、札幌のような寒冷な気候の観光地に行きたがっているのかもしれません。
沖縄と回答した人もオランダ、スウェーデン、チェコといったビーチリゾートを持たない、真夏を除いて平均的に気温が低めの国々の在住者でした。こちらも札幌の例と同様に、旅先には非日常的な環境を求めていることが読み取れます。
ただし、Google Analyticsで2021年5~10月の6か月間のジャパンガイドのページアクセス数を調べてみると、OsakaページのPVはSapporoページの2倍以上を記録していました。普段からジャパンガイドへのエンゲージメントが高いユーザーほど、アンケートに回答してくれる確率も高いという傾向があります。このことを踏まえると、東京と京都は日本に詳しい、もしくは過去に1度以上訪れたことがある人でも(再び)訪れたいと考える人の割合が特に多いと言えるでしょう。
「その他」を選んだ回答者による自由回答で多かったのは「東北」でした。ほかにも九州地方の都道府県を挙げている回答も散見されました。
国境再開と一口に言っても、日本国内の状況だけで判断することはできないうえ、今後の感染状況やワクチン接種率の推移など、今後の状況を左右する要因は多く存在しています。これらの要因次第では、今回の調査結果とは違う方向に市場の傾向が動く可能性もあります。
しかし、今回の調査結果が少しでも観光業に関わる皆さまの参考になれば幸いです。
またジャパンガイドのサイトを活用して「こういった市場調査はできないか」、「こういった施策は実施可能か」などといったご要望・ご相談がございましたら、ご遠慮なくジャパンガイド事業部(jg@export-japan.co.jp)までご相談ください。
ジャパンガイド事業についての詳細:https://www.export-japan.co.jp/solution_services/japanguide/