訪日にあたって旅行者が興味を持つこと・気にすることの分析
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japan-guide.com(以下、ジャパンガイド)では訪日旅行者に向けた様々な情報発信を行っており、その中には地域情報や観光施設情報もあれば、交通情報や日本に関する予備知識的なものまであります。
今回は内容を絞って、発信されている情報のジャンルごとで、どのようなページにアクセスが集まっているかを見ていきます。
ジャパンガイドのメインユーザーは欧米豪圏をはじめとする英語で情報収集をしている訪日旅行計画者や訪日滞在中の旅行者ですが、そのような人々がどんなことに興味を持って日本を旅するのか/日本を旅する上でどのようなことを気にされているのかを知るヒントになれば幸いです。
ジャパンガイドでは、大きく分けて次のようなセクション分けとなっています。
Ⅰ Destinationsセクション:
「東京」などの地域観光情報や「伏見稲荷」などのスポット情報
Ⅱ Interestセクション:
歴史や文化や宗教などの予備知識や、アクティビティ・食などの嗜好に対する情報
Ⅲ Plan a tripセクション:
交通や予算など訪日旅行計画のために必要な情報や、訪日旅行のための役立ち情報
Ⅳ Newsセクション:
訪日旅行に関係する最新のニュース情報
先述した通り、今回は
・訪日旅行者はどんなことに興味を持って日本を旅するのか
・日本を旅する上でどのようなことを気にしているのか
を考えていきたいので、主にⅡとⅢのセクションを見ていきます。
旅行者はどんなことに興味を持って日本を旅するのか
まずⅡのセクションですが、こちらはAの「訪日旅行者はどんなことに興味を持って日本を旅するのか」に関わる内容です。
早速ですが、このセクションでよくアクセスされているページを見ていきます。以下図表1をご覧ください。
こちらは、Interestセクションに類するページを、直近1年間(2023年10月1日~2024年9月30日)でのアクセスが多かった順に20位まで並べたものです。右側には、前年のPV数と前年比を載せています。
ジャパンガイドのサイト全体の年間アクセスが61,366,868PVから71,633,514PVと約16%伸びていることを加味して、増減比が16%以上となっている項目を太字にしています。
該当するのは「温泉ガイド」「日本食リスト」「エチケットリスト」「雪の名所リスト」「ハイキングガイド」「桜名所一覧」「温泉の楽しみ方」ですが、いずれも訪日旅行中の体験や滞在をより楽しむための情報です。
これに対し、赤字で記した前年よりアクセスが落ちているページは「日本史概略」「漢字について」「神道について」「相撲ガイド」「サムライについて」で、相撲のページを除けばいずれも予備知識的な内容です。
こうした予備知識的な内容は、まだ訪日旅行が差し迫っていない余裕のある時期に閲覧されやすいコンテンツです。
そのため、それらが一様に微減傾向にあるのは、前年よりも訪日確度が高いユーザーの割合が増えたためと思われます。
その他では上位に温泉関係のページが二つ入っており、いずれも大きくアクセスを伸ばしているのは興味深い傾向です。実際の利用状況も踏まえて考えたいところですが、温泉に対する関心が高まっているのかもしれません。
3位の「日本食リスト」も大きくアクセスを伸ばしています。
こちらは食関連コンテンツの見出しページで、以下のイメージのように「ラーメン」「寿司」など具体的なメニューを紹介するページと、「外食の仕方」「レストランの種類」のようなTIPSを案内するページとが掲載されており、ユーザーはこれらの中から気になるページへとさらに遷移していくような仕様になっています。
訪日旅行者に人気な日本食といえばラーメンや寿司がよく話題になりますが、この食関連のコンテンツで最も多くのPVを獲得していたページはそれらではなく、意外にも「テーブルマナー」でした。
この傾向は直近一年に限ったことではなく前年も同様でした。
日本人が思っている以上に、正しいマナーに則って食事を楽しみたいと考えている旅行者が多いことを伺わせます。
日本を旅する上でどのようなことを気にしているのか
続いて、ⅢのPlan a tripセクションを見ていきます。
主に交通を含む各種インフラサービス、お金に関すること、シーズン情報、旅程などで、これらは「日本を旅する上でどのようなことを気にしているのか」に関わる内容です。
ジャパンガイドは特に交通関連情報を閲覧しに訪れるユーザーが多いため、交通関連コンテンツがほぼ上位を占めているのですが、今回はこのセクションの中で交通関連とそれ以外に分けて見ていきます。
まずは交通以外のページから、この一年間でよく見られたトップ20を先程と同様に紹介させていただきます。以下図表2をご覧ください。
先程と同様、対前年増減比が16%以上となっている項目を太字に、マイナスになっているものを赤字にしています。
まず、「祝祭日一覧」が特に大きく伸びているのが目につきます。
「ゴールデンウィーク」「年末年始」などもPVの増加が激しく、日本人のスケジュール感を以前より気にするようになっているのが伺えます。
おそらくは、混雑に対する意識が強まっているのだと思われます。訪日旅行が増加の一途であることは外国人の間でも知られているでしょうし、またパンデミックの影響もあることでしょう。
実際に、ユーザー間で質問や相談ができるジャパンガイドの掲示板「Forum」では、次のようなゴールデンウィーク中の混雑を懸念する投稿がありました。
内容をかいつまんで言うと、東京・京都・大阪・広島にてゴールデンウィーク中にそれほど混まない場所はどこかを聞いています。
(この質問への回答も面白いので、気になる方は是非こちらからご確認ください。)
他には、モデル旅程(「訪日旅程14日間決定版」)や「電源コード」、「入国」など、比較的訪日ビギナー向けのコンテンツもアクセスが増加傾向にあります。
また、「宅配便」と「郵便」のアクセスは合わせると20万PVを越えており、旅行中の荷物の輸送への関心も高いことが伺えます。
(ジャパンガイドのメインユーザーである欧米豪圏からの旅行者の場合、訪日旅行期間が長い分荷物が多くなるため、これらのサービスが好まれます)
北陸・関西の鉄道パス需要の上昇
最後に、交通関連カテゴリーのページアクセスに触れたいと思います。以下図表3をご確認ください。
過去にJR Passの料金高騰の影響により、その代替となる手段への関心が高まっていることについて触れました。(詳しくは下記記事をご覧ください)
今回はそれ以外の部分を見ていきます。
注目は、飛躍的にアクセスを伸ばしている「北陸アーチパス」と「JR関西・広島エリアパス」です。
前者は前年の約2倍、後者に至っては前年の6倍近いPV数となっています。
このような増加の要因ですが、まず大きなファクターとして先述したJR Pass料金の高騰があります。
特に関西・広島エリアパスは、所謂ゴールデンルートのうち関東圏を除く地域をカバーしている形になるため、従来JRパスでゴールデンルートを旅していた旅行者と非常に相性がよいものと思われます。
北陸アーチパスについては北陸新幹線延伸の影響が考えられます。
この2例ほど顕著ではないものの、他の地方の鉄道パスのページも全般にアクセス上昇傾向にあります。
また、鉄道の利用の仕方は国によって様々で、中には電車に乗ったことが一切ないという旅行者もいます。
JRパスがあれば多くの場合、いちいち切符を買ったりする必要がなくなるので、昨年まではそのような面でも旅行者の負担が緩和されていました。
今では旅行者が普通に鉄道を利用する場面が増えており、それが「ICカード」「電車利用の仕方」「鉄道乗車券一覧」「鉄道普通乗車券ガイド」などといったページのアクセス増に繋がっています。
近年は観光庁事業の後押しもあって、地方での誘客施策やツアーなど特別なコンテンツの造成が進んでいます。
しかし、訪日経験の浅い旅行者にとって、地域から地域へと移動することは必ずしも簡単なものではありません。
せっかく地域に強い関心を持ってくれた旅行者に、本当に訪れてもらい、満足してもらうには、できるだけ安全かつ確実に来てもらえるよう事前案内などの工夫も重要となります。
詳細は地域によって事情は様々に異なるところですが、そのような案内においてはぜひ上記文中でリンクしているジャパンガイドの記事なども参考にしていただけると幸いです。