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2025年ジャパンガイドアクセスデータから見る、インバウンド情報収集の傾向

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大阪万博のあった2025年の訪日インバウンドですが、最終的な訪日来客数は4,200万人超と、前年比15.8%超で過去最大の数値を更新しました。
秋には中国政府による訪日渡航自粛措置があったものの、総じて各国からの旅行者数は増加しており、中でも米国や欧州などの英語圏からの来訪者数が顕著に伸びた1年でした。

 

Webトラフィックにおける大変革:AI Overview

一方、ユーザーの情報収集面に関しても2025年は大きな変化があった一年で、具体的にはAIO(AI Overview:検索結果の最上部に生成AI(Gemini)がWeb上の情報を統合・要約して表示する機能)の普及が挙げられます。
AIOは2024年5月に米国で正式リリース、同年8月に日本でも一般公開され、以降は改良を繰り返して2025年春頃には大規模なアップデートが施され、対応する検索結果の数が大幅に増加しました。AIOが身近な存在となったのはこの時期と言えます。

このAIOに関連して、今年に入って非常にショッキングな発表がありました。
Google全体での調査結果において、検索結果に対するCTR(クリック率)が、AIO普及前の2023年12月と比較すると、2025年12月の数値は58%ほど減少していたことが示されました。
いわば、キーワード検索したユーザーの約58%がAIOの回答で完結してしまい、検索結果の個別ページへ遷移しにくい『ゼロクリック』の状況が加速しています。
このように、AIOの普及以前と以後で、ウェブ上での情報収集に関しては大きな変化が生まれています。

以上のようなインターネット上での変化も踏まえつつ、本稿では2025年のジャパンガイドのアクセスデータのインサイトを解説させていただきます。

 

Google全体より20%以上も減少幅を抑えることに成功

ジャパンガイドは、「Fushimi Inari」や「Odaiba」など日本の観光地名を英語表記キーワードで検索した結果の掲載順位が1位である場合が多く、総じてオーガニック検索で高いプレゼンスを誇る英語の訪日webメディアです。(下記参考画像参照)

参考画像:japan-guide.com Media Guide 12P

そのこともあって、次の図のように、サイトへのトラフィックのうち85%程度という非常に大きな割合を、Googleなどでのオーガニック検索が占めています。

参考画像:japan-guide.com Media Guide 11P

オーガニック検索からの流入には、先述したAIOの影響が大きく介在するところとなっていますが、ジャパンガイドにおいてその影響がどうであったかを見てみましょう。
先程触れたGoogleでの調査結果と同様、2023年12月と2025年12月のジャパンガイドでの数値を比較してみた場合、次のようになりました。図表①をご覧ください。

図表① サイト全体のオーガニック検索からのセッション数推移
※2023 & 2025 12/01–31 Google Analytics参照

Google全体での調査結果が-58%だったのと比較すると、ジャパンガイドにおいてはオーガニック流入の減少幅を20%ほど抑制できている計算になります。

この点については、次の要素が複合的に組み合わさっていると推測されます。

①AIでは再現できない実地調査に基づく一次コンテンツの強み
 =専属ライターの現地取材・調査を通じたコンテンツ制作
②単純質問以上のユーザーの情報収集目的に応えうる訪日ガイド情報の実用性・網羅性
 =外国人旅行者目線のコンテンツの充実
③AIのソースとして頻繁に引用・紹介される要因となった情報の質の高さ
 =最新情報への更新頻度の高さ・正確性・旅行者にとっての有益性など

総じて、AIOでは解決しきれないユーザーの需要に応えられていることが結果に大きく影響していると考えられます。

また、面白い結果として、「オーガニック流入」以外の数値はむしろ伸びている、という現象が挙げられます。以下の図表②をご覧ください。

図表② サイト全体のオーガニック検索以外からのセッション数推移
※2023 & 2025 12/01–31 Google Analytics参照

こちらを見ていただくと、「direct」「unassigned」「referral」「その他」のいずれも数値は伸びていることがわかります。これらを合計すると、+113,127セッションの増加となっています。
これらの変化にもAIOが関与しています。AIOは回答のソースとしてURLを表示することがよくあります。しかしこのURLの表示のされ方が多様であるために、クリックした際の処理も安定しておらず、Google Analytics上で「direct」として計上されたり、「unassigned」として計上される場合があるからです。
検索内容に対してAIOが表示されているので本来はオーガニックとして計上されるべきなのですが、現状は上記のようになっています。
そのため、2025年12月の「direct」「unassigned」の中には相当数、本来ならオーガニックとしてカウントされるべき数字も混ざっていると想定されます。

また、Google以外のAI回答(Copilot、ChatGPTなど)からの流入も、リンクの表示のされ方によって「unassigned」「referral」とカウントされることが確認されています。

総じて、「direct」「unassigned」「referral」などの数字の増加は、GoogleAIOを含めたAIの数字が流入したことによるものも混じっていると言えます。
もちろん増加分の全てというわけではありませんが、こうしたAI引用からの流入の存在も、先程挙げた③の「AIのソースとして頻繁に引用・紹介される要因となった情報の質の高さ」と直接的に関係しています。

それでは次に、この1年間でユーザーの内訳がどのように変化していったかを見ていきます。

 

AIOの影響の地域的グラデーションと、意外な国の躍進

下記の図表③は、2025年のジャパンガイドを訪れたユーザーのうち、日本語ブラウザ利用者を除いた国別トップ20です。

図表③ サイト全体の国別ユーザー数TOP20
※2025/01/01 – 2025/12/31 Google Analytics参照

英語のみで情報発信を行っているジャパンガイドならではで、トップは英語圏訪日旅行者の最大母数である米国となっており、他にも英語圏の国の名前が上位に多々見られます。ちなみに2位は日本国内となっておりますが、こちらは日本語ブラウザ以外の利用者となっているため、在日外国人か訪日滞在中の旅行者と想定されます。
こうした国別のユーザー構成の順位は過去発表時と比べて劇的な変動こそないものの、増減値に目を向けると、興味深い現象が確認できます。以下図表④をご確認ください。

図表④ サイト全体の国別ユーザー数TOP20の対前年比
※2024/01/01 – 2025/12/31 Google Analytics参照

AIOの影響により、2025年のサイト全体でのユーザー数は対前年比-23.66%となっています。
この「-23.66%」という数値がジャパンガイドにおけるユーザー数推移のベンチマークと捉え、図表④では対前年比がこの数値より高かった国を、低かった国をに色分けしています。
こちらの色分けを概観すると、いくつか例外はありますが、主に赤は東南アジアの国々、青は欧米豪圏という構図になっているのが確認できます。

AIOについて、比較的影響が軽微になりやすい傾向が伺えるのが、AI法やDMA(デジタル市場法)のあるEU圏です。
こちらでは検索結果に対してAIO回答が表示される比率が低めで、かつ表示のされ方も折り畳まれていて閲覧するために余分なアクションが必要な形式となっています。
EU圏の国が図表③において対前年増減の幅が低めとなっているのは、こうした影響に拠る部分が大きいと考えられます。
図表④では、ドイツ・オランダ・スペインなどで特に上記の傾向を伺えます。

逆の傾向が見られるのが東南アジアです。
この要因の一つには、AIOの仕様と親和性が高いチャットボット等の対話型インターフェースの人気が東南アジアでは特に高いことが挙げられます。
別の要因として、東南アジアでは「モバイルファースト」と言われるほどスマートフォンのみでの情報収集が盛んなことも挙げられます。スマートフォンの場合、PCと比べて画面が小さいため相対的にAIOが大きく出てきやすいことや複数ウインドウを活用した情報収集がしにくいといった特徴があります。
これらの特徴はAIOで満足して検索結果のページにアクセスしにくくなる所謂「ゼロクリック現象」の頻度の多さに繋がっています。

一方で興味深い例となっているのが、トップ20の中で対前年プラスになっているブラジルです(濃青)。
こちらが興味深いのは、一般的にブラジルは東南アジアに比較的近い傾向を持ち、AIOの影響を特に受けやすい地域と言われているためです。しかし、図表④を見ると全く違う結果が出ています。
AIOへの傾向では東南アジアと近いと言われるブラジルで、何故異なる結果が出ているのでしょうか?
この点ですが、ジャパンガイドが初めて訪日旅行を検討するユーザーの需要に応えられるコンテンツを揃えているため、と考えられます。
というのも2023年秋のブラジル人への観光ビザ免除措置以降、ブラジルでは訪日人気が上昇し続けており、訪日来客数は2024年が対前年比+69%、2025年はさらに対前年比+29%という伸び率で増加の一途にあります。
加えて、2025年中には大阪万博で日本への注目が大きく向上したこと、ブラジル人旅行者の間で人気渡航先であった米国で入国審査が2025年に厳格化したことなどの影響もあります。

海外旅行は、一歩間違えば取り返しのつかない危険やトラブルにも直結するため、あまりよく知らない国についての情報収集となるとAI回答では安心を欠きます。
また、まとまった情報が欲しい場合は、単純回答だけでは不足で、網羅的なソースを求めるようになります。
上記のような事情で、初訪日となるユーザーはAIOの回答よりもより確かなソースを求めやすい傾向にあると想定されますが、今回はそれが訪日人気急上昇中のブラジルで数値として特にわかりやすい形で現れたと考えられます。

次に、具体的にどのような情報収集がなされているのかの参考に、閲覧・利用されているコンテンツについての数値を見ていきます。

 

見つけられやすいコンテンツと、価値を出しやすいコンテンツの分類

2025年を通じて合計PV数の高かった順で、ジャパンガイドのページを上から20ページ並べると、次のようになります。

図表⑤ サイト全体のページ別PV数TOP20
※2025/01/01 – 2025/12/31 Google Analytics参照

メジャーな地域についてのページや、訪日旅行のためのベーシックな情報コンテンツがPV数を多く稼ぎやすい点は、過去に触れた傾向から極端な変動は見られません。

ところで、このPVの内訳にも2つのパターンがあります。Googleオーガニック検索から直でそのページを訪れるパターンと、それ以外での流入です。
前者にあたるOrg.LP数(オーガニック検索からのページ流入数)の多い順でトップ20を並べると次のようになります。

図表⑥ サイト全体のページ別オーガニック検索流入数TOP20
※2025/01/01 – 2025/12/31 Google Analytics参照

先程のPV数のランキングと比較して、一部上位に来ているページに違いがあることがわかります。
たとえば図表⑤のPV数ランキングでは8位に位置していた「訪日目的地一覧」は、図表⑥のトップ20には見られません。
逆に、「祝祭日」「皇居」のページのように図表⑤のみでトップ20に来ているケースも見られます。

注目はPV数に対するOrg.LP数の割合です。
こちらの%が高い項目は、「オーガニック検索から流入される比率が高い」ページとなっており、%が低めのページと比較して「AIOが表示されにくい・またはAIOが表示されたとしても詳細確認されやすい検索キーワードに対応している」ということが言えます。

ちなみに、先述した図表⑤8位の「訪日目的地一覧」はPV数382,312に対してOrg.LP数は70,713となっており、PV数に占めるオーガニック流入の割合は18.50%です。
検索からの流入が少なめであるにも関わらずPV数が高いのは、サイトの別のページから回遊してこのページに訪れたり、ブックマーク・外部リンクなどから訪れるケースが多いことを示しています。
ページの内容は訪日旅行の行き先候補となりやすい場所を一覧にしたもので、いわば訪日旅行計画の初期段階で活用されやすいコンテンツとなっていますが、そのことも併せて考えると、次のようなユーザーの情報収集行動が考えられます。

・まず、具体的な地名やテーマなどについての具体的なキーワード検索をして情報収集をする(ex: 大阪の観光スポットを確認する、Suicaの買い方を確認する、など)
 ↓
・検索結果に表示されたジャパンガイドページ内容を確認する
 ↓
・サイトの主旨(訪日旅行のための総合情報サイト)を踏まえた上で、トップページなどで他の項目もチェックする
 ↓
・サイトを眺めていて、気になったページで追加の情報収集をする(ex: 目的地一覧のページで行き先を検討する、など)

PV数は大きいもののOrg.LP数は小さいページとしては他にも「鉄道パス一覧」のページがあります。
こちらは日本の各地にあるお得な鉄道パス情報をまとめたもので、PV数20万超にも関わらずOrg.LP数が5万となっており、検索からの流入は25%程度です。
このギャップの大きさから、このページは「キーワード検索の段階では情報収集の目的とはなりにくいものの、サイト内で項目を見つけることで関心を抱くようになる類の情報」と考えることができます。

インバウンドに関するwebサイトでの情報発信については、このように「キーワード検索から流入されやすいコンテンツ」と「キーワード検索からは流入されにくいが有益性の高いコンテンツ」があることがわかります。
後者のコンテンツは、まだ認知度が低かったり、検索キーワード化しにくかったりする場合が考えられます。そのため、見つけられにくいかもしれませんが、それだけにサイトの付加価値を伝えるコンテンツとも言えます。

昨今は自治体や企業による観光サイトの多言語化が推進されていますが、上述したようなユーザーの検索行動の変化に基づいたページ評価が不可欠です。
その上で、どのコンテンツで流入を稼ぎ、どのページで付加価値を提供するかという『コンテンツのポジショニング』を整理することが、より戦略的な情報発信に繋がります。

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