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JRパス/地方鉄道パス需要の大きな変化と、旅行者の情報収集の変化

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前回に続き、ジャパンガイドへのアクセスから確認できる2023年1-3月と2024年同時期の比較を、今回は《どのようなページがよく見られたか?=どのような需要が特に確認できたか?》と解釈して取り上げていきます。

ユーザー層についての分析をした前回記事も併せてお読みください。

 

タビナカユーザーの増加が確認できる2024年

その前に、大きな流れを押さえるため、まずはサイト全体としての数値を掲載します。
以下図表1は、2024年1-3月の3か月間におけるサイト全体としてのページ表示回数(PV数)・ユニークユーザー数(UU数)のデータです。

図表1:ジャパンガイドPV数・UU数比較
※Google Analyticsデータ参照:2024年1-3月(対前年2023年1-3月)

上記図表1のいずれの項目も対前年でプラスになっていることから、2023年同時期と比較して2024年が好調であることが見て取れます。

図表1にはアクセスを海外と国内で分けて表示していますが、後者は9割以上が外国人によるものです(こちらのページでダウンロードできる媒体資料8ページご参照)。
PV数とUU数はいずれも伸びているのですが、国内ユーザー(大半はタビナカの訪日旅行者)と海外ユーザーでその伸び方に若干差があるのは面白い点です。

海外からアクセスしているユーザー約455万人によるPVが約1,516万回というのは、ユーザー1人あたりに3.3ページ以上が見られている計算になります。
対して、タビナカのユーザー約117万人によるPV数は約350万ですが、この場合ユーザー1人あたりに見るページ数は3ページ未満です。

タビナカよりタビマエのほうが様々な情報を見ているのだと考えられる結果です。
このような現象が起きるのは、タビナカのほうが時間が限られていること、スマートフォン利用率がより高いこと、web以外でも情報を得やすい環境であることなどが原因として挙げられます。

 

JRパス需要の大きな減退と、地方鉄道パスの需要増

続いて、2024年1-3月にユーザーがどのような情報を求めたのかの参考に、ジャパンガイド内でよく見られたページのトップ20を紹介します。下記図表2をご覧ください。
ここでは対前年+140%以上を記録したページを太字に、対前年で下回っているページを赤でハイライトしています。

図表2:ジャパンガイドよく見られたページトップ20
※Google Analyticsデータ参照:2024年1-3月(対前年2023年1-3月)

「JRパス」の数字が対前年70%未満と落ちているのに対して、「JRパス計算ツール」のページが対前年で倍以上の伸びを示しています。
後者だけを見るとJRパスの需要が上がっているように思えるかもしれませんが、正解は
おそらくJRパスへの関心は高いままだが、需要は下がっているです。

というのは、現在の「JRパス計算ツール」のページの仕様と関係しています(以下イメージ参照)。

japan-guide.com 「Japan Rail Pass Calculator」

上記は、「JRパス計算ツール」のページで《東京→京都→奈良(日帰り)→大阪》の旅程での交通費概算を出したものです。
下部の赤い枠の中ではJRパスを利用した場合の料金も表示されており、割に合っているかどうかを”pay off”または”does not pay off”で表示しています。
上記画像では《東京→京都→奈良(日帰り)→大阪》の旅程はJRパスを買うには”does not pay off”=割に合わない、と言われています。

昨年の改定以前の料金帯ならば、一週間以上滞在する訪日外国人は思考停止でJRパスを買えばよかったと言えました。
しかし現在の料金帯は、事前にきちんと調べておかないとお得になりません。

例えば、現在の料金帯では、次の画像にある《東京→箱根(日帰り→東京)→金沢→白川郷→高山→京都→広島→宮島(日帰り→広島)→大阪→関空》という旅程を一週間でこなして6,000円程度お得になるといった案配です。
この旅程を一週間でこなせるイメージはなかなか湧きませんが、そのくらい短期間に相当な移動を入れなければ、JRパスの恩恵は出にくくなっています。

japan-guide.com 「Japan Rail Pass Calculator」

利用する経路によっては地方のエリア限定パスを使用したほうがコストパフォーマンスが良い場合も多いため、「JRパス計算ツール」のページでは経路次第で地方パス料金情報も紹介するようプログラムされています(以下イメージ参照)。

japan-guide.com 「Japan Rail Pass Calculator」

欧米豪圏からの訪日旅行者にとって必需品とされてきたJRパスは、おそらく依然として関心を持たれ続けています。
しかし、関心を持って調べてみた上で、《JRパスを使用しない》という選択をされている旅行者は多いのではないでしょうか。
その点が、「JRパス計算ツール」ページのアクセス激増と「JRパスページのアクセス激減に現れていると考えられます。

「日本の鉄道パス一覧」や「ICカード(Suica)など」のページへのアクセスが増加しているのも上記と関連した傾向でしょう。
特に1.5倍以上の伸びを記録している鉄道パス情報についてはJRパス料金改定の影響が大きいと見られます。
JRパスを使用しない長期滞在者が増えた分、地方の交通パスを軸にした周遊や滞在を検討する旅行者は今後一層増えていくのではないでしょうか。

 

イレギュラーだった2023年から、2019年の次の年へ

他にアクセスが大きく増えているページに「桜開花予報」「東京」「訪日旅行時季」があります。
いずれも2023年同時期には例年よりも異様に低かった記事なので、数値が戻ってきたものと思われます。
特に「東京」の記事が伸びているのは、東京を訪日の玄関口とする欧米豪圏旅行者たちが本格的に戻ってきているが故と感じられます。
「桜開花予報」も同様に欧米豪圏に特にウケの良いコンテンツですが、そちらに関しては以下の記事でも解説しているのでご参照ください。

japan-guide.co.jp:鎌倉が急上昇 「桜」への外国人の関心の過去3年間の統計

また、赤でハイライトした項目を見てみると、意外にもトップページのPV数が落ちているのがわかります。
ジャパンガイドの場合、以下のイメージでも確認できる通り、訪日旅行者がタビマエ/タビナカで検索する様々な言葉でGoogle上位に表示されるようになっているため、トップページ以外からのGoogle検索での流入も多いのが特徴です。
しかし、これだけサイト全体の数値が伸びているのにトップページの数値が落ちるのは興味深い現象です。

ジャパンガイド媒体資料「Google検索順位」

上記のような個別のキーワードから流入された場合、例えば「Aomori」の検索ワードからジャパンガイドに来たユーザーはトップページを飛ばして「青森」のページから閲覧を開始します。
このように個別キーワードから流入したユーザーは、そのままトップページにはアクセスせず情報収集することが少なくありません。特に、タビナカで可読性がPCよりも低いスマートフォンで閲覧しているユーザーの場合、その割合は高まるでしょう。
そして冒頭で触れた通り、今年はタビナカでのアクセスが大きく伸びています。

逆にトップページから訪れるのはどのようなユーザーでしょうか?
主にブックマーク等を使用する人達と、具体的な日本の地名などではなく「Japan」等の大雑把なキーワードで検索している人達の2パターンが考えられます。

そこで、トップページを訪れたセッションのみを対象にして、どのような経路でサイトに訪れたのかGoogle Analyticsのトラフィック統計を見てみました。
下記図表3がその内容です。

図表3:ジャパンガイドトップページトラフィック分析
※Google Analyticsデータ参照:2023年&2024年1-3月

オーガニック検索はGoogleなどでのサーチの結果ジャパンガイドに辿り着いたセッションを差し、ダイレクトはブックマークや履歴等での直接的な流入を指します。

サイト全体として見るとジャパンガイドへの流入はオーガニックが8割以上でダイレクトとその他を合わせても2割未満なのですが、トップページに限っては上記図表のようにダイレクトの比率が高くなります。
トップページにブックマークしているユーザー(リピーター率が高め)がそれだけ多いためと考えられます。

このダイレクトの数字を中心に、表の内容をご確認ください。
閲覧開始数(サイトの特定ページに最初に訪れたセッションのみをカウントした数)では2023年も2024年も殆ど差がないのに、PV数に大きな開きがあるのがわかります。
つまり、ブックマーク等でトップページからサイトを見始めた数はほぼ変わっていないのですが、セッションの途中でトップページを表示させる人が減っているのだとわかります。

サイト構造は変わっていないのでサイト回遊性の問題とは考えにくく、何か外的な理由があると考えられます。要因として挙げられるのは以下の通りです。

<1>
2024年は2023年よりも、タビナカの限られた時間に閲覧しているユーザーの絶対数(スマートフォン率が高い)が増加している。

<2>
入国規制緩和から間もなかった2023年1-3月は、久しぶりに日本について様々な情報を入手しようとサイト内を回遊するユーザーが他年よりも多かった。

2つ目に挙げた要因については、これが2024年との比較だけでなく、2019年との比較でも同様の現象が起きていることからの憶測です。(詳細は以下の過去記事参照)

japan-guide.co.jp:インバウンド解禁からまもなく半年。ジャパンガイドアクセス動向から、回復具合を観測(後編)

この2019年と2023年の比較も踏まえると、2024年になってトップページへのアクセスが減ったのではなく、2023年だけトップページへのアクセスが異常に高かった(サイト全体へのアクセスは低かったにも関わらず)のだと考えられます。

このようなユーザーのアクションの面からも、入国規制緩和明けの2023年がイレギュラーな1年であったこととが感じられるのではないでしょうか。

 

最後に

今回は2024年1-3月でよく見られているページ上位20のデータを中心として、イレギュラーな年であった2023年から、インバウンドの需要が元に近く戻ろうとしていることに触れていきました。

しかし必ずし元通りというわけではなく、例えば記事中で触れたJRパスや地方の鉄道パスに関する需要の上下であったり、異なる点も多々見受けられます。
今回は特に触れられませんでしたが、従来なら主要目的地とは言えなかった地域に関心を持つ旅行者は間違いなく増えており、興味深いアクセスの動向は多々見受けられます。

ゴールデンルート(東京~富士/箱根~京都/大阪の定番旅程)以外の地域で、2019年以前よりも注目が集まっていると思われる地域については、いずれ特集を組んで紹介させていただく予定です。

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